「自立」している市町村にはどんなところがあるのか。表の通り、原子力発電所など原子力関連設備がある市町村が目に付く。関連の助成金収入などが財政を潤しているということだろう。その他では首都圏の市と愛知県の市が多い。住民が多く地方税である住民税の収入が多かったり、企業が多く法人地方税の収入が多かったりするところと見られる。つまり、自立しているのは、特殊要因と言ってもよい歳入構造になっているところが中心とみていいだろう。何しろ自治体全体の3.1%しか自立できていないのである。
「大阪市域から上がる税収のうち3分の1しか大阪市域に還元されていない」
橋下徹大阪市長のブレーンとして知られる上山信一・慶応大学総合政策学部教授は語る。大阪市などが使う説明資料によると、09年度に大阪市域内から上がった税収は3兆9701億円。内訳は大阪市税が6236億円、府税が5674億円、国税が2兆7791億円だった。市税は市のために使われるので100%還元される計算だが、府税は1359億円、国税に至っては5447億円しか市域に還元されていない。
「大阪市民は7987億円もの税収を交付税として地方に還元している」と資料には記載されている。大阪市から上がった税収を何で地方に回さねばならないのかと指摘しているのだ。
橋下大阪市長の狙いも財政の自立にある
大阪で維新ブームが起きたのは、大阪の経済的な行き詰まりが大きなきっかけになっている。橋下市長が目指す大阪府・市の統合の先に大阪の財政的な自立があるのは言うまでもない。自立を考えれば、その地域から上がる税収で本源的にやっていけるのかどうかが焦点だ。
実は似たような主張が欧州でも巻き起こっている。昨年11月末、スペイン北東部のカタルーニャ州議会選挙で、スペインからの独立を訴える勢力が過半数の議席を獲得した。日本では経済危機が深刻な同州が欧州連合(EU)から脱退したがっているという文脈で語られることが少なくないが現実は逆。国際的な企業も多く、貿易の拠点として潜在力のある同州が、スペイン南部の貧しい州を財政的に支えるのは嫌だ、というのが独立派の主張。財政危機のスペインから逃げ出し、当然、自分たちはEUに残留したいということなのだ。大阪の主張と重なる部分があるわけだが、中央集権の近代国家が軋みはじめているように思える。