古賀が発掘し、活性炭に塗布したのは紫外線でなく青色LED(発光ダイオード)などの光に反応する「可視光応答型」と呼ぶ新タイプの光触媒。紫外線が及ばない空間でも働く。「恐らく、家電用途ではほとんど使用例がないのでは」と、古賀は見ている。活性炭に、一定時間おきにLEDを照射して触媒を働かせ、細菌などをクリーニングするのだ。
このフィルターと、微細物質の捕獲が得意なタイプなどを合わせた3層フィルターは、0.09マイクロメートルの物質も捉える。ちなみに、日本メーカーの空気清浄機は余程の簡易型でない限り、中国の大気汚染で話題となっている「PM2.5」(粒径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質)の捕獲は、問題なくできるのだという。
“後発ベンチャーの商品”というハンデを克服する戦略
高機能に自信を深めた古賀だが、認知されていないベンチャーの製品が、簡単に売れるはずもなく、「客観的かつ厳格なお墨付き」をつける作戦にでた。日本では空気清浄機に関する電機業界の規格はあるものの、性能を評価する機関はなく、古賀は海外をリサーチして米国家電製品協会による国際的な評価基準を見つけた。
これは、(1)タバコの煙(2)ホコリ(3)花粉─という大きさの異なる3物質の1分間当たり清浄能力を測る「CADR(クリーンエア供給率)」と呼ぶ評価法。テストの結果、カドーは3つの物質について、いずれも最高レベルの評価を得ることができた。この評価結果はカタログにも記載されており、無名デビューしたこの製品の性能を、しっかり担保している。
技術者としてソニーに入社した古賀は、出たばかりのウォークマンの開発に十数年携わった後、ICレコーダーの立ち上げ、さらに中国拠点のトップなど「充実した30年を過ごさせてもらった」と振り返る。初期のウォークマンは機械技術と電子技術が融合するメカトロニクスの時代。古賀ら設計者は、あの小さなボディーに組み込む技術開発のため、金属やゴムなど最適素材の発掘にも血眼になった。それが、新タイプの光触媒を見出したように「今になって生きている」という。
顧客の反響によると、カドーの評価を高めているのは機能だけでなく、デザインや高度な金属加工により本体から伝わってくる質感などにもあるそうだ。カドーとは「華道」を意味し、クリエイティブディレクターを兼ねる鈴木が打ち出すデザインブランドでもある。「生け花のように『日常のワンシーンを彩る』デザイン」を、製品の根底に置きたいという。