「最近、日本は何を見ても“対中牽制”に見えるみたいですね。ロシアとかオーストラリアとかインドとか・・・中国を怖がるあまり、希望的観測に陥っているのではないですか?」
もっとも、これはロシアが中国一辺倒の立場を取るということを意味するものではない。今年に入ってから日中間で尖閣諸島を巡る緊張が高まった際には、ロシアはほぼ沈黙を貫いた。中国は対日領土問題でロシアとの共同戦線を組むことを狙っていたと言われるが、あくまでロシアは応じなかったのである。その背景には、これまで述べてきたようなロシア側の日本に対する政治・経済上の期待があったものと思われる。
「つまらない」けれど「普通の関係」
まとめるならば、近いうちに領土問題が劇的な進展を遂げることはありそうもないし、ロシアが日本にとって都合のよい安全保障上のゲーム・チェンジャーとなってくれそうな見込みも薄い。また、ロシアは依然として日本周辺で爆撃機や偵察機による哨戒飛行を繰り返しているほか、北方領土駐留ロシア軍も撤退しておらず、軍事的な緊張関係が完全に解けたわけでもない。
甚だつまらない結論であることを承知で言えば、当面は経済面での実利的な協力を進めつつ領土や安全保障に関する対話や交流を積み重ねていくほかないだろう。
だが、昨今の中国や北朝鮮との関係は、たしかに展開が激しく「おもしろい」ものの、決して望ましい状態とは言えまい。「つまらない」と感じられるような範囲に日露の関係をマネージしておくことは、両国を「普通の関係」に保つ上での重要な基礎と言えるのではないだろうか。
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