2022年8月14日(日)

World Energy Watch

2013年5月8日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

石炭火力以外の設備新設はあるのか

 英国でも事情は同じだ。石炭以外の設備では競争力はない。電力市場が自由化されているために、コストが高く電気が一年を通して売れない可能性が高いガス火力の新設はない。英国では今後設備の老朽化により、電力の供給余力は急速に減少する。需要増加などのケースでは20年代初めに図‐2の通り停電が発生する。設備の新設が必要だが、市場に任せれば石炭火力が建設される。

 しかし、これは温暖化対策を進める英国政府には見過ごせない事態だ。石炭火力は、ガス火力はおろか、石油火力より二酸化炭素を排出する。温暖化対策の観点からすれば、自由化された市場は大きな妨げになる。自由化された市場では不安定で比較的コストの高い再生可能エネルギーの電力が競争力を持つことはない。大きな設備投資を伴う原子力の設備を作るにも、将来の電力価格が不透明なことは大きな障害になる。ガス火力も、再生可能エネルギーも、原子力も投資する人はいない。あるとすれば、発電コストが安く二酸化炭素を大量に排出する石炭火力だ。これは困る。困った英国政府は低炭素の電源導入のために新たな制度を導入する予定だ。

新制度は結局、総括原価主義?

 洋上風力を主とした再生可能エネルギーと原子力には固定価格保証制度が導入される。電力市場の価格とは関係なく、常に一定額の収入が保証される。収入の保証があれば、投資のリスクは極めて限定される。ちなみに、英国政府の関係者に何%の収益率を保証してくれるのか質問したが、それは事業ごとに異なるとして答えは得られなかった。

 稼働率が低迷することが予想されるガス火力に対しては、設備の容量に対して支払いが行われる制度、容量市場が導入される。要は、設備を作れば、その設備の容量に応じて一定額の収入は保証される。新設設備に対しては10年間の支払いが保証される予定だ。この支払いがあれば、投資の減価償却費を賄うことは可能になる。稼働率が低迷しても投資資金の回収ができるのであれば、投資家は安心できる。選定はオークションで行われが、どの投資家も稼働率が低迷した場合でも投資の回収ができる金額を要求することになるだろう。英国では、新制度の導入による電気料金の大幅値上げがいま懸念されている。

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