2022年8月14日(日)

World Energy Watch

2013年5月8日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 しかし、ここで問題になるのが、電力市場だ。自由化された市場では、発電コストが安い電源でなければ、年間を通して使ってもらえない。安い電源から需要が付き、最も高い電源は電力需要が旺盛な夏場と冬場の一時期だけしか需要がつかないからだ。今、火力発電のなかで最もコストが安いのは、どの国でも石炭火力だ。1973年の第一次オイルショック以降、この40年間、英国、日本など採炭条件が悪化したにも関わらず雇用と安全保障面から生産を無理に続けた国を除けば、石炭の価格は一貫して一番安かった。90年代に石油価格が大きく下落した時には、石炭の価格も大きく下落した。石油に対して競争力を維持しなければ、売れなかったからだ。

(出所)資源エネルギー庁資料より筆者作成
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 これからも1年を通して電気が売れるのは競争力のある石炭火力だ。天然ガス火力では、最需要期にしか電気が売れない可能性が高い。電力が他の産業と異なるのはこの点だ。他の産業では、設備により稼働率が大きく異なることは考えられない。震災前の中部電力の設備稼働率は表‐1の通りだ。石炭が圧倒的に競争力を持っていたことが一目瞭然だ。最需要期にしか電気を買ってもらえない設備は、買ってもらった発電量分しか収入はないので、設備投資、維持・操業コストを賄えず自由化された市場では破産する。2000年にピークを打った後天然ガスの生産が減少を続けている英国でも輸入炭を利用した石炭火力が最も競争力がある。

シェールガスのコストダウンは期待薄

 自由化された市場では、コスト競争力があり年間を通し収入が見込まれる石炭火力以外の発電設備を新たに建設する事業者は先ずいないだろう。日本の電力の買い付けでも同じことが起きる。東電は現在260万kWの火力発電設備の入札を進めている。第三者に発電設備を建設してもらい、発電された電気を東電が引き受ける。その買い取り上限価格は1kWh当たり約9.5円だ。この価格で発電できる燃料は石炭しかない。天然ガスでは燃料代だけで、この価格を超えてしまう。

 仮に米国のシェールガスが将来輸出されるようになったとしても、この価格を下回る発電コストに仕上がる可能性は少ない。現在の米国のシェールガスの採掘コスト、液化費用、輸送コストから計算すると、日本着の価格は1トン5万~7万円になるとみられている。米国の石油・ガス業界がシェールガスの輸出に熱心なのは、国内向けより高く売れると目論んでいるためだ。天然ガスを喉から手がでるほど欲しがっている日本向けにはできるだけ高く売ろうとするだろう。とすれば、将来シェールガスが日本向けに出荷されても、今の輸入価格約8万円を大きく下回ることはないと見るほうが自然ではないか。となると1kWhあたり10円を超えているガス火力のコストもそうは下がらない可能性がある。結局石炭以外では競争はできない。しかし、大型港湾が必要な石炭火力の適地は日本にはそう多くはない。

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