2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月21日

 クインシー研究所のパリシイ副所長が、Foreign Affairs誌ウェブサイトに8月26日付けで掲載された論説‘Last Chance For America and Iran’で、現在交渉されているイラン核合意再開交渉で合意すべきであり、米共和党が政権を奪還したら、再開された核合意を廃棄すると公約しているが、そうさせないためには合意の内容をより野心的にする必要がある、と書いている。主要点は次の通り。

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・合意への反対者は、新たな核合意はより短期間かつ弱いものだと批判している。確かにイランが核爆弾を製造のために必要な濃縮ウランを得られる期間(ブレイク・アウト・タイム)が当初の合意では12カ月であったが、現在の合意案では6カ月から9カ月に短縮されている。しかし、現時点でイランは数日で必要量の濃縮ウランを手に入れることが可能なので半年というのは遙かにましだ。

・バイデンは2020年の大統領選挙でバイデン候補は、速やかに復帰する旨を公約に掲げていたので、イラン側は米国の核合意復帰を期待していたが、バイデン大統領は核合意復帰を急がず、貴重な数カ月間を、核合意に強く反対しているイスラエル、アラブ首長国連邦、サウジアラビアとの協議に費やす一方、イランとの信頼醸成については気にしなかった。

・イラン政府関係者は、バイデン大統領が、交渉の代わりに対イラン制裁を継続することによって、より厳しい条件をイランに課そうとしていると考え、対抗措置としてウランの濃縮計画を急速に拡大した。21年6月に核合意再開交渉が始まった時には、既に交渉の雰囲気は最悪であった。

・21年8月に就任した保守派のライシ新大統領は、核合意は優先的な課題では無いとして、過去の核合意について見直しを続け、その間もウラン濃縮のための遠心分離機を増設して濃縮ウランの備蓄を増やし続けた。米国側は、イランが事実上の核兵器保有国になるための時間稼ぎをしているとの疑いを強めた。

・米共和党が24年に政権を奪還すれば、再開された核合意を廃棄すると公約しているが、そうさせないためには合意の内容をより野心的にする必要がある。米国が再開された核合意から離脱しない件については、引き続き協議することとし、(米国を含む)全ての合意の当事者が、仮に合意に違反すれば、その対価を払うようにするべきである。

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 イランの核合意再開問題は、ボレル欧州連合(EU)外交安全保障政策上級代表が、「最終合意案」を提示したが、案の定、イラン側は、色々とコメントを付けており、交渉を再開して時間稼ぎをしようとしているように見える。交渉が続いている限り、イランは核開発を継続出来る。

 更に、問題なのは、8月29日、イランのライシ大統領が、未申告の核物質問題を止めなければ合意再開は難しいと発言したことである。未申告の核物質問題とは、イランが金属ウランを製造していたことついての国際原子力機構(IAEA)の調査の件であるが、金属ウランは、核爆弾の製造に必要不可欠な技術だ。


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