2022年12月9日(金)

教養としての中東情勢

2022年9月25日

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 イランで髪を覆うヘジャブ(スカーフ)の着用が不適切だとして女性が風紀警察に連行された後に死亡した事件で、全土に抗議デモが拡大し、イスラム体制を揺るがす事態に発展している。背景には厳しい宗教規制や米制裁による生活苦などの国民の怒りが事件を機に爆発したことがあるが、重病説がささやかれる最高指導者ハメネイ師の後継者争いも絡み、収拾の見通しは立っていない。

抗議デモはイラン全土だけでなく、世界で広がっている(AP/アフロ)

風紀警察の連行と暴行疑惑

 今回の騒乱の発端は9月13日に起こった。西部クルディスタン州からテヘランに家族で旅行していたマフサ・アミニさん(22歳)が風紀警察に連行されたのだ。風紀警察は女性の行動や服装がイスラムの教えに反していないかなどを監視する宗教警察だが、アミニさんのヘジャブのかぶり方を不適切として拘束、矯正センターに収容した。

 アミニさんはその3日後に搬送先の病院で死亡した。当局は死因を「心臓発作」としたが、遺族によると、頭がい骨が折れており、暴行を受けて死亡したとの疑惑が浮上した。

 17日にアミニさんの地元で行われた葬儀では、住民の怒りが爆発。多くの女性がヘジャブを脱ぎ捨てて抗議し、詰め寄られた警察が発砲した。抗議行動はアッという間にテヘランをはじめ全国に波及、1979年の革命以来最大級の広がりとなった。

 抗議行動では、女性たちが次々にヘジャブをたき火に投げ捨てて燃やしたり、群衆の前で髪を切ったりし、また民衆が「女性、自由」「独裁者に死を」などと叫んでデモ。最高指導者ハメネイ師のポスターも引きずり降ろされた。政府発表などによると、これまでにおよそ50人が死亡、数百人が負傷したが、実際の被害ははるかに多いと見られる。

 政府はネットや携帯の通信網を遮断、インスタグラムなどの使用を不能にし、革命防衛隊は「容赦なく取り締まる」との声明を出して対応に必死だ。ライシ大統領もアミニさんの遺族に対して死の真相の究明を約束したが、国民の抗議行動が鎮静化する見通しはない。

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