核合意再建協議の先行きは真っ暗
国内状況が混沌としてきたイランにとって対外的な最大の懸案は核合意の再建協議の行方だが、ライシ大統領は9月21日の国連演説で、再建には経済的利益の保証が必要だとして、米国に制裁の解除を要求した。譲歩する姿勢は見られず、協議の先行きは真っ暗な状況に陥っている。
欧州連合(EU)の仲介で昨年4月から始まった米国とイランの間接協議は紆余曲折を経てこの8月、EUが両国に最終案を提示し、一時は楽観的な見方が流れた。しかし、イラン側は革命防衛隊のテロ組織指定解除の要求は取り下げたものの、「米国が合意から再び離脱しない保証」の要求は撤回せず、行き詰まった。
米国のブリンケン国務長官やサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は合意を断念したような発言をしており、再建協議の破綻が現実味を帯びている。バイデン大統領も交渉をいつまでも続けるわけにはいかないとして、協議が不調に終わった場合に備え「他の選択肢」を用意したいとの意向を表明。米側はイスラエルとの軍事的手段の行使も含め、強硬路線への転換も視野に入れ始めたと見られており、再び軍事的な緊張が高まる事態も想定される。
イランも米国との対決が先鋭化することを見越し、ロシアや中国、反米ベネズエラとの関係強化にまい進している。とりわけロシアとは、米国がウクライナ戦争でプーチン・ロシア政権への非難を激化させるのに逆らうように関係を強めている。
ロシアがイランの偵察衛星を打ち上げ、今月にはロシアの民間企業大型代表団がテヘラン入りして経済協力協定に調印した。イランの国内外情勢は世界の台風の目となりそうな雲行きだ。