2024年7月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年10月4日

 8月31日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)社説が、「ソロモン諸島の無思慮」と題し、中国傾斜を強めるソロモン諸島は米艦船のホニアラ寄港を拒絶し、中国は先般締結した安保協定の下で早速利益を手に入れていると述べている。

Anastasiia_Guseva / iStock / Getty Images Plus

 ソロモン諸島は8月中旬、米沿岸警備隊の巡視船の寄港を認めなかった。これは、英艦「スぺイ」の寄港拒否に続くものだ。ソガバレ首相は、これは書類手続き上の問題によるものだと述べた。

 これを単に日常的な役所業務の混乱と見過ごすことはできない。ソロモン諸島が締結した中国との安全保障協定により、中国軍や警察が同国に進出する道が開かれ、基地が建設される可能性もある。

 中国は、経済支援や海軍を通じて自国の影響力を強めている。中国は、スリランカを説得し、同国南部に中国が建設したハンバントタ港への「調査船」の入港を認めさせた。インドはこの船は軍事データを収集しているとの見方を示し、米国も懸念を表明した。

 これらの出来事は、米国が対応能力を低下させる中で、米海軍にとり重要な課題になっている。バイデン政権は、こうした危険に気付くのが遅かった。米国は、南太平洋のキリバスとトンガに大使館を開設すると発表した。米国は、この地域への経済支援を拡大しようとしている。

 太平洋島嶼国は、中国との協力を検討するに当たっては、慎重な対応を取ることが国民への責務である。米国は気紛れな協力者かもしれないが、中国は、投資という名の「融資」の返済期限が来た時には、危険な協力者になりうる。スリランカを見ればいい。ソロモン諸島は、中国との友好関係について慎重に考えることが賢明であろう。

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 8月26日、ソロモン諸島が米沿岸警備隊の巡視船オリバー・ヘンリーの寄港を拒否していたと報道された。同船は結局ソロモン諸島に寄港せず、パプアニューギニア(PNG)で給油した。その前には英国艦船スペイが入港できなかった。

 他方、8月29日には米海軍病院船マーシーがホニアラに寄港し、翌30日の歓迎式典にはソガバレも出席した。30日、ソロモンは米巡視船などが入港できなかったのは、手続きが間に合わなかったからと述べ、ソガバレは入港手続きの改定まで全ての国に軍艦寄港を見合わせるよう要請したと述べた。

 上記の社説は、巡視船オリバー・ヘンリーの寄港が拒否されたとして、ソロモン諸島の決定を批判し、ソロモン諸島は、中国との友好関係につき慎重に考えることが賢明だと述べる。社説の結論は、正にその通りだ。社説がスリランカの例を見よと言うのも正しい。

 その後、豪州艦のソロモン諸島水域への入域が認められ、ソロモン諸島からは豪州とニュージーランドは先のモラトリアムの例外だとも説明されている。寄港が政府内で微妙な問題になっているのだろう。いずれにせよ、ソガバレの親中姿勢は現実である。中国との安保協定は太平洋のバランスを大きく変える危険があり、慎重に対応していくことが必要である。


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