私は1990年から2016年までの26年間、ルイ・ヴィトンやティファニー、フェラガモという「ラグジュアリーブランド」の業界に身を置き、仏・米・伊3カ国の経営スタイル、ブランドマネジメントを経験してきた。ブランド業界で学んだことは、現在でも私自身の仕事に対する考えや価値観に大きな影響を与えてくれている。
足元、多くの日本企業が熾烈な価格競争に晒され、苦しい立場にあるが、価格競争に陥らずに「強いブランド」をつくるには、どのようなことを実践していくべきか。ブランド企業という特殊な世界に身を置いた私が、あらゆる企業に通じる「最適解」を示せるわけではないが、これまでの経験から、日本企業や日本人が見つめ直すべき「価値観」を以下、提示してみたい。
「価格」「モノづくり」
日本人と欧米人の考えの違い
物価上昇に関するニュースが連日のように報じられている。日本のみならず各国市民の反応を見聞きするたびに、私はつくづく、日本人と欧米人の「価格」や「モノづくりに対する哲学」の違いを感じる。
日本では「値上げ=悪」であり、「企業はもっと身を削るべき」という〝無言の圧力〟が極めて強い。消費者の不満の矛先は値上げしたつくり手たる企業に向かい、お詫びする企業もある。
一方、欧米人も同様に、「値上げは困る」「これでは生活ができない」との反応がある。だが、不満の矛先は値上げした企業ではなく、値上げせざるを得ない状況に追い込んでいる「社会そのもの」に向かう。だから、その改善策を政策に強く求めるのである。
こうした違いが生まれる背景には、……
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