2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年12月14日

CIL868/Gettyimages

 11月19日付のTaipei Times は、習近平と通常の外交的関与をするのは不可能であり、最近の米中経済安全保障調査委員会(USCC)の年次報告の勧告に沿った備えに従い米台の防衛強化をすべきである、と主張している。

 11月15日の米中経済安全保障調査委員会(USCC)の議会宛て年次報告書は、中国による台湾侵略に備える行動につき勧告している。勧告は、想定される中国による侵略に対する経済制裁の計画と実行可能性評価を策定する省庁間委員会の設立を含む。USCCは、議会が米国防総省に対し、中国軍に対抗する米国の能力を強化する方法につき指示するよう、また、米台防衛の相互運用性を改善するための追加的資金を提供するよう勧告している。

 バイデン米大統領は、G20サミットが開催されたバリ島で習と会談した。習は、「内政問題」と見なす台湾を「統一」する計画に対する米国の干渉について警告を発した。バイデンは習に中国の「台湾に対する威圧的でますます攻撃的な行動」について語り、米国の台湾政策は変わっていないと確信させようとした。が、習は新華社に対し「台湾問題は中国の核心的利益の核心であり、米中関係の政治的基盤の基盤であり、米中関係において越えてはならない最初のレッドラインである」と述べた。

 習が台湾への軍事侵攻を試みるかは未知数だが、中国がサイバー戦争や認知戦争、経済的圧力、軍事的・無人機による台湾周辺への侵入、台湾を国際機関や行事から排除するよう他国に外交的圧力をかけるなど、他の方法で台湾への侵略を継続することは確かである。中国による封鎖や侵略の可能性も排除できない。したがって、委員会が提案したような準備措置が不可欠である。

 指導者たちは、習との対話が、権威主義者が世界秩序を軽視し、台湾や他の主権民主主義国家に対する絶え間ない脅威を続けることに対して、いかなる影響を及ぼすことを期待してはならない。台湾は米国と緊密に防衛協力を続け、可能な限り USCC が提案する準備措置を支援すべきである。

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 中国共産党大会を終え、無期限に国家主席の座に就くこととなった習近平が、インドネシア、タイでの国際会議の場で、いかなる発言を行うかは国際的な注目点であった。そこでは、硬軟二つのアプローチが見て取れたと言って良かろう。

 第一に、台湾海峡をめぐる問題については、中国の主張は、従来の繰り返しで新味は全くなかったということができる。表現がこれまでよりも一層硬化したと言えるぐらいであり、「台湾問題は中国の核心的利益の核心」であるとし、「中国にとっては譲れないレッドラインである」とするものである。

 第二に、これまでの中国の主張の「戦狼外交」と呼ばれる強硬かつ覇権主義的な外交姿勢については、全体としてやや温和な友好的姿勢に切り換え、マイナスイメージを覆い隠そうとするレトリックも散見された。断絶していた対話を米国との間で復活させるという動きも見せた。


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