2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年12月6日

 11月8日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の社説が、米国の対中半導体輸出規制には莫大なコストがかかる、米国は輸出規制の範囲に関してもっと明確にするべきだと述べている。

Dragon Claws / iStock / Getty Images Plus

 この社説は、①10月にバイデン政権が発表した対中半導体規制措置は、米中デカプリングというよりも破裂というべきで「大きな賭け」だ、②中国の軍事的野望を止めたいとの米国の考えは「理解できる」が、その影響は極めて広範だ、③米国人も規制されるが規制の範囲につきもっと正確なことが必要だ、④レア・メタルやリチウムなどにつき中国が報復してくることも考えられる、⑤中国が実力で台湾再統一に出る時の対中制裁の影響はウクライナ戦争どころではない、⑥米国は国内の産業復権政策を主張通り実現すべきだ、と述べる。

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 FTの社説は、対中対応の必要性については米国の考えを「理解」している。先般のドイツのショルツの訪中についても批判的だ。他方、米中のデカプリングには莫大なコストが伴うと指摘する。しかし少々コストがかかっても関係国が協力して一定の対応を取ることは必要であろう。中国が不正な手段を使ってでも西側の技術を入手して軍備の近代化を進め、膨張的で攻撃的な振る舞いを一向に変える兆候を見せないからである。それは周辺国や世界に大きな脅威となっている。

 日本なども協力した中国のWTO加盟も、「平和的台頭」というよりは、段々と「資本主義国」や市場、グローバリゼーションの善意の悪用になってきたと言っても過言ではない。中国にはもっと分別のあるグローバリゼーションへの参加者になって貰わねばならない。10 月の共産党党大会を見てもますます悪い方向に行っているとしか思えない。

 10月7日に米政府は、①対中半導体チップ輸出を禁止し、米国の製品や技術を使って製造した半導体の対中輸出も禁止する、②「米国人」が中国の関係企業などと関係することも禁止することを発表した。これは輸出や人の関与を含めて包括的に規制しようとするものであり、従来のやり方(エンティティ方式)を大きく強化するものである。しかし、米国の10月の発表はやや唐突だった。本件についてはオランダを含む同盟国等との協議が続けられていたため、10月の米国の一方的な措置の発表は「驚き」であり、関係者は不満だったようだ。


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