10月31日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)で、同紙コラムニストのラナ・フォルファーが、バイデン政権の最近の中国に対する半導体輸出規制は、中国の戦略に対する反応であると論じ、中国のあり得べき報復に備えてサプライチェーンの強化を図るべきことを強調している。
バイデン政権の最近の半導体に関する対中輸出規制については、中国に対する経済戦争の布告だという説もあるが、米国は中国に単に反応、それも遅く反応しただけである。
中国が「中国製造2025計画」をもってサプライチェーンのデカップリングへの道を開いたことを想起すべきである。これは7年前に公表され、2、3年のうちに西側の技術、特にチップから自立する欲求が明示されていた。中国は技術開発に深く根差した軍産複合体であり、成長してその地域的な経済の軌道に他の諸国を取り込む余地を有する市場である。
現在、高性能チップの軍事と民間の使用を分離することがほぼ不可能な時代にあって、これらの製品を最大の敵対国に届け続けるのかという問題がある。チップ・セクターの米国企業と従業員は中国から出国しつつある。しかし、チップを使う米国のブランド企業は、政府に何処までデカップリングは進むのかを問い始めている。
その答えは、新規制にどの位例外が認められるのかによる。中国が次にどう出るかにもよる。中国はレアアースの輸出を制限するかも知れない。レアアースは国防産業や電気自動車で使われる。
中国は自動車に使われる中国製の非高性能チップの輸出を制限出来ることだろう。これを米国で製造あるいは同盟国から大量に調達するには少なくとも2年はかかると見られる。中国は色々な電子部品の輸出を削減し広範囲の品目のインフレを促進するこかもしれない。
結論は、供給源の重層化である。一つは、非高性能チップや部品のインドや東欧での生産増強であろう。企業は在庫は悪であるとの考えを再考すべきだろう。リスク計算には、より大きな在庫コスト、積み上げに要する時間と運転資本、新たなサプライチェーンに枢要な物品を分配し補充する価格が組み込まれなければならない。
政府はチップだけでなく食料、医薬品、エネルギー、PPE(個人用防護具)を含む最も枢要なサプライチェーンのリストを精緻なものにする作業を続けなければならない。商務省がこの情報蒐集を主導するべきである。
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バイデン政権の最近の中国に対するチップの包括的な輸出規制は、中国が先端技術における自立を目指していること、その中国の軍民融合戦略の故に先端技術の分野での進歩は安全保障上の懸念を惹起せざるを得ないことへの反応であるとのこの論説の論旨はその通りであると考える。
そのような情勢にあって、中国に対して何事もなかったかの如く高性能チップとその製造装置を提供し続けることはあり得ないと言うべきであろう。米国は同盟国にも協調を求めている。
他方、米国の規制の効果となると直ちには明らかにならないとの観測が一般的のようである。規制の抜け穴の有無や例外扱いの如何にもよるであろう。