インターネットに接続する端末のあり方は、コンピューターからスマートフォン、タブレット、ウェアラブル(スマートウォッチなど)と多様化してきた。現在は、これにVR・AR・MRを重ねたメタバース端末によるネット利用が模索されている。
メタバースとは新たなデバイスだけではない。新たなサービス形態として、巨大なビジネスチャンスを生む可能性がある概念だ。現在はシリコンバレーの各社を筆頭に、世界の多くの企業が研究開発に取り組んでいる。例えば、旧フェイスブック社で、企業名をそのものズバリの「メタ」に変更するという気合の入れようだ。
メタ社の場合は、2022年10月の決算が市場の落胆を誘発して株価が急落するなど、本稿の時点では苦境に立っているように見える。だが、元来は友人同士のコミュニケーションツールであったフェイスブックが、マネタイズを焦る中で肥大化し、それが一部勢力の政治的な悪用を生んだり、プライバシーの扱いが問題になったりしただけだ。
創業者のザックバーグ氏は、だからこそ、とまでは言わないが、現在のフェイスブックの次のビジネスモデルとしてメタバースに注力している。その本気度には確かな存在感を認めざるを得ない。
日本の技術が生きる立ち位置とは
このメタバース、現在は草創期であり、誰にでもチャンスはあるように見える。だが、残念ながら日本勢がハードやソフトで、世界のトップランナーに躍り出るのは難しい。
まず、メタ社もそうだし、来春ローンチを考慮しているらしいアップル社の場合もそうだが、ゴーグル状の端末はスタンドアロンで高性能なCPU、GPU(画像処理装置)、各種カメラ、マイク、センサーを複雑に組み合わせたマシンである。それに、両手を使用するなどの動作入力デバイスがアクセサリとして付く。
装置としては小さくても、ハードウェアのシステムとしては、複雑なサプライチェーンのマネジメント、そして初期設計から膨大な投資を必要とするプロジェクトとなる。一方で、VRの場合は、仮想世界における民法上の権利や真正性の認証など、抽象的な世界における法務に関して、攻めと守りを主として英語で行わねばならない。またARやMRの場合はプライバシーなどの問題もあり、国際的な立法提案も含めて世界のイニシアティブを取る必要がある。