「Wedge」2022年2月号に掲載され、好評を博した特集「〚人類×テックの未来〛テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
筑波大学ヒューマンエージェントインタラクション(HAI)の研究室に属しながら、自らもSF漫画の原作者として発信を行う宮本道人氏。なぜSFは現実に大きな影響を与えるビジョンを描くことができるのか。SF特有の「3段階の未来予測」があるからだと指摘する。①予想外の未来社会を想像し、②そこに存在する課題を想像し、③その解決策を想像する、という3つのプロセスだ。日本におけるSF思考、SFプロトタイピング(仮説)の現状について聞いた。
聞き手・構成 編集部(友森敏雄)
聞き手・構成 編集部(友森敏雄)
SFを生み出す力やSFに熱中することと、経済力(新規ビジネスの創出)は直結している。「メタバース」の語源は、ニール・スティーヴンスン氏のサイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』(1992年)で初めて登場した言葉だ。
SF小説の流行と、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスに代表される新たなビジネスリーダーの台頭は軌を一にしている。実際、劉慈欣氏の『三体』(2008年)に代表される中国SFも隆盛を極めており、SF界でも世界のトップを米中が争っているように映る。
一方で、1960年代、70年代とSFが華やかなりし頃の日本の姿は、今は昔となった部分もある。米国で大ブームとなったSF小説も日本では未邦訳であったり、刊行後も絶版になったりすることが多い。SF小説を機に大きな経済ムーブメントが起きた米国とは対照的で、その差がそのまま経済の差になっている。
私の肩書は「応用文学者」「科学文化作家」だ。聞き慣れないのは当然で、私がつくった造語だからだ。これからの時代は、1人の人間がいくつもの仕事を掛け持ちして、その掛け合わせによって価値を生み出すのだ。架空だけれども現実に接した独自の肩書を生み出せるような思考が「SF思考」であるとも言える。