2年ぶりの開催となった「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2022」。かつては家電の見本市だったCESも、電気自動車(EV)に代表されるように、自動車が電動化していくなかで、主役の座を占めつつある。今回のCESを取材した、ロサンゼルス在住のジャーナリスト・土方細秩子氏に、自動車(EVとGM)、フードテック、人工知能(AI)の4つをピックアップしてリポートしていただく。
テスラ「モデル3」が1月10日の時点で今年1~3月分を完売したという。今注文しても、手に届くのは4月以降ということになる。イーロン・マスク氏は昨年12月に「テスラの売上は2025年には数百万台に達する」と発言した。
電気自動車(EV)業界では今の所ダントツのテスラだが、その魅力はやはり「これまでにない新しいもの」を見せた点にある。「モデル3」のインテリアには、スピードメーターも燃料計もエアコンやオーディオのつまみも何もない。すべての設定、コントロール、表示は中央に設置された大型モニターで行う。この発想が革新的、と支持される理由の一つだろう。
これを追いかける他のメーカーも、耳目を引くような新しい技術を見せることに注力し始めている。今回のCESでも、ちょっと人目を引くような技術や仕様を見せるメーカーが現れた。それらを紹介したいと思う。
車体の色が変化するBMW
まずはBMW。EVや自動運転の導入に以前から積極的だったBMWだが、他のメーカーによる追随に少し停滞している感がある。そのBMWが打ち出したのが「スイッチひとつで色を変えられる車」だ。
現時点ではまだコンセプトではあるのだが、新型EVである「iX」の未来バージョンとして、「Flow」と名付けられた車は色が白から黒に、グラデーションやラインが登場するような形で変化する。同時にホイールも光が点滅する。
この色変え技術、車体が三角のモジュラーパネルになっており、その一つ一つの色が変わることで実現できている。BMWでは何年も前からこの三角のモジュラーパネルというコンセプトを出しており、パネル同士の間隔をコントロールすることでカーブの時に内側の車体が縮み、外側が伸びることでローリングしない安定したコーナリングが可能になる、という未来の車を考案していた。
まだこうしたモジュラーパネルの強度や安全性などの点から実現していないが、当時としてはかなり斬新なアイデアで、それが今回の色の変わる車で継続的に試されている。今回は白黒だが、さまざまな色のバリエーションが出れば自分だけの個性的なカラーの車、ということでヒットするかもしれない。