「Wedge」2022年10月号に掲載されている特集「諦めない経営が企業をもっと強くする」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
日立製作所、ソニーで半導体事業を率い、1996年には10年にわたって続いた日米半導体協定を終結させる交渉に携わった〝ミスター半導体〟こと、牧本次生氏。「一国の盛衰は半導体にあり!」と、喝破する。日本の半導体の再興には何が必要なのか聞いた。
「(半導体分野で)米国は再び世界を主導する」
バイデン米大統領は8月9日、半導体の製造・研究開発に約520億㌦(約7兆円)の補助金を投じる「CHIPS法(半導体支援法)」の署名式典の演説で、その意義をこう強調し、米国の半導体生産・研究開発などにかける本気度を内外に示した。
「一国の盛衰は半導体にあり」
私は、さまざまな場面で繰り返しこの自説を訴えてきた。今回のバイデン大統領のように、米国の歴代大統領が、メディアを通じて半導体の重要性を国民に呼びかける場面を私はこれまでに何度も見てきた。そのたびに、日本の首脳との違いを思い知るのである。
この日米の違いはどこから生まれるのか。端的に言えば、「半導体とは、米国の歴史そのもの」だからであろう。
米国は1940年代に世界で最初にトランジスタを開発し、50年代には集積回路(IC)を発明した。これらの分野ではそれまで、半導体より10倍以上も大きい真空管を用いていたが、非常に重く、仮にロケットの制御システムを真空管で製造すると遠くに飛ばすことができなくなる。ミサイルも同様である。その点、半導体は非常に小型かつ信頼性が高く、半導体産業の黎明期、米国は軍需・宇宙産業に積極的に活用した。ケネディ大統領が提唱した「アポロ計画」の遂行にも、ICが重宝された。また、米ソ冷戦の時代にあっては、大陸間弾道ミサイルをどれだけ遠くへ飛ばすかが大きな課題だったが、それには高品質の半導体が極めて重要であり、そのニーズは次のような言葉で表現されていた。