2022年12月9日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月14日

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 ニューヨーク・タイムズ紙のトーマス・フリードマンが、10月12日付の同紙で、商務省が10月7日に公表した中国向けの高性能半導体とその製造装置の新たな輸出規制を論じ、半導体を巡る中国との衝突により米国は海図のない海に突入したと些かの不安を表明している。

William_Potter / iStock / Getty Images Plus

 米国は今やロシアと中国の両国と同時に衝突している。われわれは海図のない海にある。

 中国との闘争は半導体を巡る戦いである。最も高性能のチップを製造する陣営が、最も高性能の精密兵器、如何なる暗号も解読する量子コンピューターを持つであろう。今日、米国とその同志国がリードしているが、中国が追いつこうとし、我々はそれを阻止すべく決意している。

 10月7 日に商務省が公表した新たな規制は、高性能の半導体やその製造装置の対中輸出を禁止するのみならず、米国の科学者等が中国で許可なしにチップの製造を助けることを禁ずる。仮に、その米国人が製造に携わっている機器が対中輸出規制の対象でない場合でも適用される。「Foreign Direct Product Rule」という規則は、トランプ政権で初めてHuawei に適用され、サプライチェーンに米国の技術が含まれるハードウェアやソフトウェアを米国企業や外国企業が中国企業に供給することを禁ずるものである。

 この規則が影響する範囲は巨大である。最も高性能な半導体は米国から欧州、アジアに及ぶ複雑な連合によって作られる。台湾のTSMCが世界一のチップ製造企業と考えられているのは、この連合のすべてのメンバーがTSMCを信頼して企業機密を託し、それをTSMC が融合させ連合全体の利益のために活用するからである。

 中国は信頼されていないので連合に入れず、旧い技術によって独自にチップの製造を余儀なくされている。中国は2017年にTSMCから28 ナノの技術を含め幾つかのチップ技術をくすね取った。

 商務長官は、次のように述べた。高度のチップ製造技術に対する新たな輸出規制は「われわれの防衛戦略である。中国は軍民融合の戦略を有し」また、商業市場と戦場の双方を制覇するために「最も高度な技術について完全に自足出来るようになることを意図している」。よって、米国と同盟国を守るため、「中国が次のステップに至るのを阻止する」。

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 10月 7日、商務省は高性能のチップとその製造に関わる中国を対象とする包括的な輸出規制を公表したが、その重大性はさほど注目されてはいないようだ。商務省の公表文は読み解き難いが、報道や法律事務所の資料の助けを借りて主要点を述べれば凡そ次の通りである。

 第一に、AIやスーパーコンピューターに使われるような高性能チップとその製造装置の中国への輸出は禁止となる。

 第二に、「Foreign Direct Product Rule」と呼ばれる規制が強化される。この規制は或る種の外国製品がサプライチェーンの中で米国起源の技術に直接または間接に由来する場合、その輸出を禁止するもので、Huaweiとその子会社に適用されて来たものであるが、今回このルールの対象が中国向け外国製の高性能チップにも拡大される。

 第三に、「US persons」(グリーンカード保持者を含む米国市民と企業)は高性能チップの開発や製造に関して中国企業に対し支援を提供することが禁じられる。米国はかねて中国企業による技術者のリクルートを懸念して来たが、頭脳流出を止めようとする斬新な規制である。当該「US persons」が関与している技術が規制対象の技術か否かを問うてもいない。

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