2022年12月9日(金)

21世紀の安全保障論

2022年11月2日

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部谷直亮 (ひだに・なおあき)

慶應義塾大学SFC研究所上席所員

成蹊大学法学部政治学科卒業、拓殖大学大学院安全保障専攻修士課程(修了)、拓殖大学大学院安全保障専攻博士課程(単位取得退学)。財団法人世界政経調査会 国際情勢研究所研究員等を経て、一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構上席研究員、現職。

 ウクライナ軍は2022年10月29日にロシア海軍の黒海艦隊に対し、海戦史上の画期となる軍事革命を象徴する攻撃を行った。

 攻撃を受けたロシア国防省の発表によれば、8機のドローンと7隻の自爆水上ドローン(以下、自爆USV)がセヴァストポリ港を本拠とする黒海艦隊に空と海からの対艦攻撃を仕掛けたという。攻撃をしたウクライナ側もUSVからの映像と共に攻撃を発表した。

 これは人類史上初のドローンによる対艦スウォーム攻撃であり、無視できない軍事革命となる可能性が高い。航空機が戦艦を初めて撃沈したタラント空襲(1940)や日本海軍による真珠湾攻撃(1941)に匹敵する契機になりそうな見込みだ。

ウクライナ軍が使用した自爆水上ドローンの正体

 そもそも今回の攻撃はどのようなものだったのだろうか。両軍の発表や既に報じられた分析を相互比較して論じてみよう。

 まずロシア軍側としては複数のドローンと自爆USVの攻撃が行われたとしているが、両軍ともに水上ドローンの映像しか出ていないので、複数の自爆USVによる停泊する艦隊への攻撃が行われたというのが現時点の確定した事実だろう。

 この自爆USVとは、何が使用されたのか? そのヒントになるのが9月にセヴァストポリに漂着し、ロシア軍に回収された謎のUSVだ。

セヴァストポリ港に漂着した自爆水上ドローン(OSINT (Uri)のツイッター)

 この謎のUSVは、衛星通信用のスターリンクアンテナと思しきものを装備し、胴体中央に潜望鏡のようなカメラと船首に爆薬を積載した偵察や自爆、それにおそらくは通信の中継も可能なタイプと目されており、ドローンの高い汎用性を象徴する機体だ。最高速度は時速110 キロメートルと目されている。

 一説には米国が供与したとされるUSVはこれではないかとも囁かれている。他方で民生部品を集合させただけの非常に簡素なつくりなのでウクライナ軍が作ったとする説もある。

 今回、ウクライナ軍が公開した自爆USVからの映像を見ると船首の形状や船首上部のセンサーがそっくりであり、既に複数の海外の専門家も指摘するようにこれと同一とみて間違いないだろう。

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