2022年12月9日(金)

21世紀の安全保障論

2022年11月2日

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部谷直亮 (ひだに・なおあき)

慶應義塾大学SFC研究所上席所員

成蹊大学法学部政治学科卒業、拓殖大学大学院安全保障専攻修士課程(修了)、拓殖大学大学院安全保障専攻博士課程(単位取得退学)。財団法人世界政経調査会 国際情勢研究所研究員等を経て、一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構上席研究員、現職。

 例えばドローンと自爆USVを組み合わせたスウォーム攻撃を台湾有事直前にされれば、戦わずして無力化されるだろう。今回使用されたのは、自爆タイプなので接触しなければならないが、電子妨害や小型ミサイルを発射できるタイプならば一定の距離に近づくだけで十分だ。

無人アセットなくして戦争遂行、日米同盟維持できない

 少なくともUSVに投資をしている中国が今回の戦いからどのような戦訓を導き出し、更なる投資を行うかは論じるまでもない。火を見るより明らかだ。

 よしんば海自艦隊が中国艦隊との艦隊決戦にたどり着けても、電子妨害ドローンによってレーダーも通信も妨害される中、無数の自爆ドローンによって損傷なり、貴重な対空ミサイルやCIWSの弾薬を射耗してしまうだろう。あとは中国艦隊が発射する対艦ミサイルによって殲滅される〝結果〟だけが待っていることになりかねない。

 そして、その悲惨な様子はドローンの4K映像によって、今回のように世界中にSNSを通じて配信され、日本の戦意は消失し、米国内を含む国際世論は中立化しかねない。

 もう一つの恐ろしいシナリオは米海軍は先述したようにドローンによる攻撃も対策も重視している。それなのに自衛隊がこの分野で遅れたままでは共同作戦能力を欠いているとみなされ、同盟にヒビが入りかねない。

 そうであってはならない。

 むしろ陸海空自衛隊は、在来型兵器と空中・水上・水中におけるドローンを組み合わせて東シナ海の低空域と浅海域―浅い大陸棚はまさしく水上及び水中ドローンの恰好の場だ―の〝空地中間領域〟を支配し、中国軍の侵入を拒絶するコンセプトとドクトリンに移行するべきだ。

 例えば日本側としては、日中なり中台の開戦劈頭に大量の安価な空中・水上・水中ドローンを南西諸島の無数の島々や護衛艦や航空機から発進させ、偵察、電子妨害やデコイによるかく乱、中国軍の戦力を東シナ海上で消耗させつつ時間を稼ぐ。その間に有人アセットは、国民を南西諸島から避難させつつ本土からの戦力を南西諸島に展開させる。そして最終的に消耗しきった中国側を叩くということもできるだろう。

 また平時に日本側のドローンアセットが収集した中国海軍のデータやこの波高く強風の多い地域におけるドローン運用のノウハウは、米軍にとっても益が多く同盟強化の材料になる。

 もはやウクライナの戦場では無人アセットなくして戦争に勝つどころか、まともに戦争すら遂行できないことが明らかになっている。日本としても新技術を古い仕事の穴埋めに使うのではなく、〝新しい戦い方〟のために使い、その為に必要な制度改革と予算の確保に全力を尽くべきだ。

 
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