2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2022年12月19日

W杯の経験をどう伝えていくか

――今大会で日本代表はベスト8の壁を越えられませんでした。今後の課題や可能性は。

鈴木 まず、言いたいのは「W杯でベスト8というのはとんでもないこと」であるということ。アジア予選では、相手チームはみな日本のやり方を知っているので、難しい戦いになる。一方で、日本国内では「勝って当たり前」のようなムードとなっている。

 W杯に出場しても、グループリーグから毎回、何かが起こる。今回、ドイツやスペインが格下と見なされていた日本に負けたということも、そういうことだと言える。

 もちろん、惨敗もある。ただ、敗退しても得るものは多い。勝った負けたを一喜一憂し、そこで得たことを下の世代に伝えながら、底上げしていかなければならない。これは一朝一夕にはかなわない。

矢沢 技術的にはどんどん発展し、情報もたくさんある。より必要なのは、チームのマネジメントや選手個人のメンタルを世界基準に上げていくことではないか。

 そうした意味では、日本はこれからがチャンス。長谷部誠選手や本田圭佑選手ら世界基準を知っている人たちが伝える立場になっていく。自らが学んだことをどんどん伝えていってほしい。

鈴木 ジーコ氏は13歳の時が最も技術が高かったと言われている。(笑)ブラジルはストリートサッカーで、大人と子ども一緒にプレーし、大人が子ども相手にも本気でぶつかってくる。子どもは知恵を使ってうまくなっていく。

 そんな中でジーコ氏は育ち、クラブチームの指導者が「この子はいける」とジーコ氏に目を付けて、引っ張られた。子どもの時にどんな指導者に出会ったかで、その後の人生が変わる。多くの子どもたちを良い方向へ導くような指導者が増えていってほしい。

矢沢 内田篤人氏が子どもたちに「日本代表ってどんな選手が集まっているのか」と聞かれた時に、「ちゃらんぽらんな選手は本当に誰1人としていないよ」と答えていることを聞いたことがある。この言葉は世界を経験した内田篤人氏だからこそ、子どもたちに強い印象を残す。

鈴木 子どもは大人の一言で良くも悪くもなる。指導者の中には、手弁当でやってくれている人も多いが、指導する子どもたちが日本の未来を変える金の卵だと思って導いてもらいたい。また世界に驚きを与えることを期待したい。

 
 『Wedge』2022年12月号では、「平成日本の停滞感 サッカーなら打開できる」を特集しております。全国の書店や駅売店、アマゾンでお買い求めいただけます。 
 平成の時代から続く慢性的な不況に追い打ちをかけたコロナ禍……。 国民全体が「我慢」を強いられ、やり場のない「不安」を抱えてきた。 そうした日々から解放され、感動をもたらす不思議な力が、スポーツにはある。 中でもサッカー界にとって今年は節目の年だ。 30年の歴史を紡いだJリーグ、日本中を熱気に包んだ20年前のW杯日韓大会、 そしていよいよ、カタールで国の威信をかけた戦いが始まる。 ボール一つで、世界のどこでも、誰とでも──。 サッカーを通じて、日本に漂う閉塞感を打開するヒントを探る。

   
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る