2024年7月16日(火)

新しい原点回帰

2023年5月7日

初期の「ヤマト糊」。日本初の瓶容器に入った「保存できるでんぷん糊」として広く受け入れられる(写真・ヤマト)

 円錐形のアラビックヤマトも、大きさや形状は多岐にわたる。首の部分が曲がったものや、反対側に細いノズルを付けて「太・細両用」の塗り分けができるようにしたものもある。さらには口紅型のスティック糊も定番商品に育った。

 一般に商品は新しい形に変わると古いものが廃れていく「進化」を遂げる。ところが、でんぷんが原材料のヤマト糊の場合は、今も変わらずラインアップに乗り続けている。タピオカのでんぷんを使った自然素材の糊は安全性が高いため、幼稚園児などにも最適だからだ。

「接着」という発想から、ビニールテープや両面テープはもちろん、粘着性のテープ型の付箋も定番商品になった。それぞれの商品群も糊と同様、お客のニーズや便利さ、好みのデザインに合わせたラインアップが広がっている。

激変する文具用品のあり方

 ところがこの10年あまり、文具事務用品のあり方が急激に変わっている。「オフィスに集まって仕事をする形から、一人ひとりがパーソナルに働く形に変わってきた」と4代目社長の長谷川豊さんはいう。糊やテープ、付箋をオフィスでまとめ買いして大量に使う時代は終わり、よりパーソナルな需要へと変わってきたというのだ。それを決定づけたのが新型コロナウイルスの蔓延による、リモートワークの広がりだった。オフィスには来ない代わりに自宅で仕事をする。そうなると作業に必要な糊などの事務用品もより小型になり、個人の志向に応える必要が出てくる。

ヤマト代表取締役社長。長谷川豊。1958年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、ニューヨークペース大学でMBAを取得。プライベートバンクのブラウン・ブラザース・ハリマンを経て2000年、ヤマト4代目社長に就任

 新型コロナでオフィス需要は打撃を受けたが、逆に「巣ごもり効果」で家庭内の手工芸などのニーズが高まり、ホビー需要は大きく伸びた。ヤマトではホビー・クラフト用品も展開しており、貼ってはがせるシールになる絵の具や、なめらかに描ける水性クレヨンなども売れている。

 一方で、アウトドア・ブームが起きるなど、人々の志向も変わった。『OUTDOOR TAPE(アウトドアテープ)』もそんな流れを意識した商品だ。出先でガムテープを使うことが多いにもかかわらず、巻き芯がかさ張り携帯しにくい点に着目、平べったくしておしゃれなビニールケースに入れ、コンパクトに持ち運びやすくした。また、テープは手で切れ、油性ペンやボールペンでも字が書ける。色も8種類のバリエーションを揃えている。

『OUTDOOR TAPE(アウトドアテープ)』(写真・ヤマト)

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