2024年12月9日(月)

新しい原点回帰

2023年5月7日

 「ヤマト糊」と聞いて、チューブに入った糊を押し出して指に取り、紙を貼り付ける工作に使った子どもの頃を思い出す人も多いだろう。今も幼稚園の工作の時間の必須アイテムとして使われ続けている。1899年(明治32年)に創業した糊の老舗「ヤマト」のロングセラー商品だ。

1975年に誕生した液状のり「アラビックヤマト」。今ではさまざまなラインアップがある

 あるいは、円錐形のプラスチックボトルに入った液状のり「アラビックヤマト」も、定番の事務用品として会社の机には必ず備えられていた光景が目に浮かぶに違いない。知らない人がほとんどいない商品と言っても過言ではない。身近にある商品だけにほとんどの人が、その存在をあまり意識しない。まるで空気のような存在だから、廃れることもなく売れ続けているのだろう。

ポスターモデルに起用した、大正時代の人気女優・栗島すみ子

 だが、ただただ同じものを一途に売り続けてきたから、老舗として120年にわたって存続してきたのか、というとそうではない。

「ヤマトの120余年に及ぶ歴史は、『接着の持つ限りない可能性を、創造的な商品に変えて世に送り出す』という挑戦の連続でした」と同社のホームページにもある。

 もともと創業時には、日本で初めて「保存の効く糊」を瓶容器に詰めて売り出した。薪炭商を営んでいた創業者が炭の小分け販売の袋貼りに使う糊がすぐに腐ってしまうことに困り、工夫を重ねた結果だった。それ以前は、米を煮たり、ご飯を潰すなど自分で「糊」を作るのが普通だった。保存が効かないので身近に置いておくことができなかったわけだ。ヤマトの糊はスタートから「画期的」な商品だったのだ。

 ヤマト糊では、瓶からプラスチックという新しい「素材」や、チューブなど、新しい「形」の商品を生み出してきた。さらに、用途に合わせた糊の開発で商品ラインアップを広げてきた。


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