2025年3月21日(金)

BBC News

2025年3月20日

装甲車を前に更地に立つイスラエル軍の兵士たち

イスラエル国防軍(IDF)は19日、パレスチナ・ガザ地区での地上作戦を拡大したと発表した。 IDFは前日には、ガザ地区で大規模な空爆を開始。イスラム組織ハマスが運営する保健省によると、この空爆のため2日間で430人以上が殺害された。ガザへの新しい攻勢によって、1月から覚束ないながらも実施されてきた停戦合意は事実上、終わった。

IDFは、ガザ地区の南北を分けるネツァリム回廊まで部隊が移動したと発表した。 ガザ地区に「南北間の部分的な緩衝地帯」を作るため「標的を絞った地上活動」を開始したと述べた。

IDFの発表をめぐり、BBCは、同軍が展開しているガザ北部ベイト・ハヌーンなどの地域に避難命令が出されていることを確認した。

イスラエルはガザ地区の住民に対し、同地区の三方を囲む地上の境界に沿って、広大な地域から退去するよう再三命令している。このことから、いっそう大規模な地上作戦が近く実施される可能性がうかがえる。

IDFのこの命令のため、避難先から停戦中に帰宅していたパレスチナ人の大勢が混乱に陥った。パレスチナ人家族たちは持ち運べるものを運び、イスラエル軍が指定した地域を逃れ、安全な場所を求めて徒歩や荷車や車で避難している。

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は19日のビデオメッセージで、パレスチナ自治区に「最後の警告」を発し、そこに拘束されている残りの人質の返還を求めた。イスラエル政府は、ハマスが依然として59人の人質を拘束しており、そのうち24人が生きているとみている。

カッツ国防相はハマス解体もあらためて求め、どちらの要求も満たされなければその代わりに訪れるのは「完全な破壊と荒廃」だと述べた。

国連職員が死亡

IDFの発表に先立ち国連は、デイル・アル・バラフの国連施設で爆発があり、職員1人を含む2人が死亡したと発表していた。イスラエル 外務省の報道官は調査に着手すると述べたが、イスラエルの責任を否定した。

国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)は、「離れた」場所にあった建物に「爆発性の兵器が投下または発射された」と述べた。事案の性質や使用された砲弾の種類については、確認されていないと付け加えた。

UNOPSのホルヘ・モレイラ・ダ・シルバ代表は「これは事故ではない」と考えていると述べ、ガザの状況は「非道だ」と非難した。 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、事態について徹底的な調査を求めた。

戦闘全面再開とイスラエル首相

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は18日、「戦闘を全面的に再開した」と述べ、今後の停戦交渉は「攻撃のさなかで」行われることになると述べた。

イスラエルによる空爆は19日も続いた。1月19日の停戦発効以来、最も激しい攻撃だった。

イスラエルとハマスは、停戦の第1段階を経て、その先をどう進めるかについて合意できなかった。それでも当初の合意では、そのための交渉はすでに6週間前に開始されていたはずだった。

ハマスは、イスラエルの条件に基づく停戦の再交渉には同意しなかったが、現在の協定を延長するために、存命のアメリカ人人質(と遺体4体)を解放することを提案していた。

対するイスラエルはハマスに圧力をかけるため、3月初めからすべての食糧、燃料、医薬品のガザ地区搬入を阻止した。

イスラエルは目下、アメリカと共同で提案している新しい停戦協定にハマスが同意するよう圧力をかけるため、強大な軍事力を駆使した大規模な攻勢に出る用意が自分たちにはあるのだと示威している。

ハマスが2023年10月7日にイスラエル南部に仕掛けた奇襲攻撃では、約1200人が殺され、人質251人が捕らえられた。拉致されたうち25人は停戦の第1段階で生きたまま解放された。

ハマスに対してイスラエルは大規模な軍事攻撃で応戦。ハマス運営の保健省によると、パレスチナ人4万8500人以上が殺害され、家屋やインフラが壊滅的な被害を受けた。

(英語記事 Israel extends ground operations in Gaza after deadly air strikes

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cqly12qq72no


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