2025年3月21日(金)

BBC News

2025年3月20日

アメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領

アメリカのドナルド・トランプ大統領は19日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と1時間にわたり「非常に良い」電話会談を行ったと明らかにした。トランプ氏は前日に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話で協議したばかり。

トランプ氏は自分のソーシャルメディアサイト「トゥルース・ソーシャル」で、ゼレンスキー氏との電話会談の目的は、ウクライナとロシアの双方の「要望とニーズ」について両国の足並みをそろえることだったとし、停戦努力は軌道に乗っていると付け加えた。

ゼレンスキー氏は、トランプ氏と「前向き」で「率直」かつ「非常に本質的」な話し合いをしたと述べた。

「アメリカと共に、トランプ大統領と共に、そしてアメリカのリーダーシップの下で、今年中に永続的な平和を実現できると、我々は信じている」と、ゼレンスキー氏はソーシャルメディアに投稿した

ゼレンスキー氏は19日、オンラインでの記者説明の場で、ウクライナ南部でロシア軍が掌握するザポリッジャ原子力発電所を、アメリカが所有する可能性について話し合ったと明らかにした。

欧州最大のザポリッジャ原発は、戦闘の前線に位置する。同原発が再び稼働するまでには2年以上かかる可能性があり、そして同原発がウクライナ人と欧州の人々にとって不可欠なものだと、ゼレンスキー氏は認めている。

また、米政府とウクライナ政府による部分停戦案の一環として、エネルギー・インフラや鉄道、港湾施設への攻撃が迅速に停止される可能性があるともした。ただ、ロシア側が停戦条件に違反した場合はウクライナは報復することになると、ゼレンスキー氏は警告した。

ゼレンスキー氏は、「(ロシアと)合意するまでは、たとえ部分的な停戦だろうと、それに付随する文書が作成されるまでは、あらゆるものが飛び交うことになると考えている」と、ドローン(無人機)やミサイルに言及した。

ウクライナ軍は昨年8月、ロシア西部クルスク州に奇襲攻撃を仕掛けた。自軍が同地域にとどまっている間は、プーチン氏は全面的な停戦に同意するつもりはないだろうと、ゼレンスキー氏は記者団に語った。

さらに、トランプ氏から、ロシア側の要求に従うよう圧力をかけられてはいないとも述べた。「そのようなことは何もない。これが事実だ。私がオープンな人間なのは、皆さんご存知でしょう。もうしそういうことがあれば、私は皆さんに率直に話したはずだ」。

ゼレンスキー氏とプーチン氏は、エネルギー・インフラに対する攻撃の停止に同意する意思があるとしている。しかし両者は、相手が攻撃を継続していると互いを非難し合っている。

トランプ氏は、エネルギー・インフラよりも広範な停戦を求めている。18日のプーチン氏との電話会談に先立ち、トランプ政権はサウジアラビアでウクライナ代表団と協議し、30日間の包括的停戦案をまとめていたが、プーチン氏はこれに応じなかった。

「ウクライナとロシアの足並みそろえるため」

トランプ氏は、19日のゼレンスキー氏との電話会談は約1時間続いたと述べた。

「話し合いの大半は、(18日の)プーチン大統領との電話会談に基づくものだった。ウクライナとロシアの双方の要望とニーズについて、両国の足並みをそろえるためだ」と、ソーシャルメディアに投稿した。

マルコ・ルビオ米国務長官はこの後、詳細な声明を発表し、トランプ氏が、特に欧州における防空システムの追加調達について、ウクライナを支援することで合意したと説明した。

両首脳は「戦況の変化に伴い、両国の防衛スタッフ間で緊密に情報共有することで合意した」という。

ルビオ氏は、実務者チームが数日中にサウジアラビアで面会し、停戦の適用範囲を黒海まで拡大することについて話し合うと付け加えた。これが戦争を全面的に終わらせるための、最初の一歩となり得るとの見解で一致しているという。

トランプ氏は、ウクライナのエネルギー・インフラにとって「最良の保護」になるとして、アメリカがウクライナの発電所の所有権を得る可能性を提起したとも、ルビオ氏は明らかにした。

ゼレンスキー氏は先月28日に米ホワイトハウスを訪問した際、トランプ氏とJ・D・ヴァンス米副大統領と、外交姿勢などをめぐって激しく口論した。しかし19日の両首脳の電話会談は友好的な雰囲気で、対象的なものだった。

先月の直接会談が決裂した後、アメリカはウクライナへの軍事援助と情報共有を一時停止したが、外交レベルで関係を改善し、今月11日には30日間の停戦案に合意した。

プーチン氏は18日のトランプ氏との電話会談で、ウクライナのエネルギー・インフラへの攻撃を停止することに同意した。

しかし、諸外国がウクライナに提供している軍事援助と情報共有が終わらない限り、包括的な停戦には合意しないという姿勢を示した

米ロ首脳の電話会談から数時間後、ロシアとウクライナの双方は、互いのインフラを標的とした空爆を実施。ウクライナ政府は、複数の病院が標的にされたと発表した。

ロシア南部クラスノダール地方では、石油施設がウクライナのドローン1機の攻撃を受け、小規模な火災が発生したと、当局者が明らかにした。

こうした攻撃が続いているものの、ウクライナとロシアは19日、捕虜を175人ずつ交換した

ゼレンスキー氏は「最大級の」捕虜交換だと述べた。また、ロシアが、交換が予定されていた175人に加えて、「重傷の」ウクライナ兵22人もウクライナに引き渡したとも付け加えた。

(英語記事 Zelensky says lasting peace achievable this year as he and Trump hail 'positive' call

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cx20v3w795vo


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