2024年5月2日(木)

新しい原点回帰

2023年5月6日

2023年に迎える100周年

 洋菓子通でも「メトロ製菓」の名前を知っている人は多くないに違いない。創業は1923年(大正12年)。初代の大浦半左衛門氏が1898年(明治31年)に米国に渡り、25年間、西海岸で修業して洋菓子製造を習得した。1923年に東京・池袋に前身の「サンライズ製菓」を創立したことに始まる。

 31年には日本初のチョコレートバーの生産を開始した。宮内庁にもチョコレートを納入し、41年には秩父宮殿下から賞詞を賜ったという。44年には戦災によって製造を一時中断するという危機も経験した。戦後はもっぱらチョコレート製造の専門メーカーとして発展し、さまざまなメーカー・小売先にチョコレート菓子のOEM(相手先ブランド製造)供給をしてきた。

 それ以来、昭和、平成、令和と、知らず知らずのうちに同社のチョコレート菓子やケーキを多くの人が口にしてきたはずだ。84年には、本社を東京の中野区松が丘に移転した。2023年には、同社はちょうど100周年を迎える。

 メトロ製菓の名前は知らなくても『RUYSDAEL(ロイスダール)』なら知っている人も多いだろう。3代目社長の大浦賢三氏が1972年に生み出した洋菓子ブランドだ。以来50年、看板商品の『アマンドリーフ』は、パイの銘菓として大ロングセラー商品になっている。77年には埼玉県八潮市に工場を新設し、『アマンドリーフ』製造ラインを敷いた。

「ロイスダールのお菓子は手作りが基本です。もちろん機械も使いますが、生地を合わせるところなどは気温や湿度で微妙に合わせ方が変わります。粉もバターも生き物ですから、手作業は譲れないのです」

 3代目の娘婿で4代目を継いだ両角幸寛社長は言う。50年間売れ続けた理由は「味」。美味しさの追求に妥協はない。工場で働く職人の技が生きている、という。

メトロ製菓代表取締役社長。両角幸寛。1969年生まれ。立教大学卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。為替ディーラーとしてシンガポールに赴任するなどの経験を経て、2005年にメトロ製菓に入社

 最先端を追い求める百貨店から新ブランド立ち上げの声をかけられたのも、「メトロ製菓ならば確かな味の菓子を作れる」という信頼感があったからだ。メトロ製菓の直営店は本社のあるロイスダール中野本店1カ所だけ。あとは大半が百貨店への出店である。ちなみに本店の店内では、パンなども販売しているほか、レストランも併設されている。

職人の技が会社の財産になる

人気の濃厚チョコレートケーキ『ル・ショコラ・クラシック』

 実は、メトロ製菓はこれまでも海外有名ブランドの洋菓子を日本国内で製造・販売してきた。百貨店から話が持ち込まれ、国内で売る製品に仕上げてきた。

 英国やイタリア、フランスの高級菓子ブランドである。今もフランスの『フォション』や『アンジェリーナ』のお菓子を作る。パリのサロンドテである『アンジェリーナ』のモンブランは大人気商品だ。

「現地のレシピをもとに忠実に再現することが求められますが、先方と綿密に打ち合わせして、日本のお客様の口に合う味に微調整をして作り上げる場合もあります」(両角社長)


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