2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月15日

 他方、一つの注目すべき最近の調査によれば、52%という高い数字の台湾人たちが、台湾は将来中国に統一されることになるだろう、と予測している。

 つまり、台湾の人たちの望む台湾の姿と彼らの予測する将来図は分裂的状況を示していることになる。一方では、台湾人のアイデンティティーを固め、当面、現状維持を続けることを希望しつつ、他方、中国への依存度の大きさ、中国の強大な影響力の前に不安感にとらわれつつあることを示している。

 馬政権としては、国内での台湾人アイデンティティーの強まりを理解し、中国との政治面での対話や交渉を受け入れないように努めるだろうが、そのような状況に中国がいつまで我慢できるだろうか、と述べています。

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 上記の黄の論評は、習体制の発足により中台関係がさらに不透明になりつつあることを的確に指摘しています。

 中国側においては、これまで5年間の馬政権下で経済、人的交流の面では明らかな進展があったが、それに比し、政治面での協議がほとんど停滞していることへの焦燥感が出てきています。特に、習自身、十数年間にわたり、台湾対岸の福建省などで勤務したため、台湾についての格別の思い入れがある、と見られています。中国としては経済面や人的往来面での緊密化を利用しつつ、あらたに台湾を取り込むため、「政治協議」を開始したいところでしょう。

 台湾当局は、政治協議に入ることには躊躇しています。昨2012年の総統選挙期間中、馬英九が中国との政治協議に言及した途端、支持率は10ポイント急落しました。さらに、台湾にとっての政治協議とは、結局のところ「台湾関係法」にもとづく米国からの兵器購入を取りやめるという類の議論に結びつきます。したがって、台湾当局としては、実質的な政治協議にいたる前段階としての双方窓口機関の相互設置などにとどめておきたいところでしょう。

 台湾の人々から見ると、経済関係、人的往来などを通じ、中国人と接触する機会がこの数年間に格段に増えました。その結果、自分たちは中国人とは異なり、「台湾人である」との意識が着実に高まっていることが各種世論調査に表れています。しかし、他面、本論評が指摘するように、経済面、人的往来面での中国の台湾浸透力を前にして、もし、台湾が無為無策であれば、やがて台湾は中国に吸収されてしまうのではないかとの不安感が強まりつつあるようです。

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