6月15日付の台湾の英字紙Taipei Timesで、黄偉峰(David Huang)台湾中央研究院主任研究員が、中台間の接触が進んだ今日の台湾において、一面では「台湾人意識」がますます強まっているが、他面では多くの台湾人の間で、中国の経済力、人的浸透力の前に、将来、中国による台湾の統一が不可避ではないかとの不安感が広がっていると、相反する二つの分裂的傾向を指摘しています。
すなわち、6月の呉習会談において、中台間の政治対話に関して、呉は馬英九総統の意思を伝達する以上のことを行った可能性がある。その会談において、習のオフィスと馬のオフィスが、今後直接のコミュニケーション・チャネルを持つことを議論したようである。
中国側としては何とか台湾を政治面での交渉に引き入れたいと考えているにちがいない。そのためには、「一つの中国の原則」という枠組みを強調する必要がある。中台の和平協議、軍の信頼醸成措置などを議論したい中国としては、「一つの中国の原則」を共通の基盤にしたいのだろう。今回呉がどこまで中国側の主張を受け入れたかはっきりしない点がある。
呉習会談には、中国側の焦りが見られる。中国にとっては、以前から議論されてきた双方の窓口機関の連絡事務所を設置することが次の課題となっている。双方の事務所が扱う中身については、一定のルールのもとに管理されなければならない。
馬政権の側から見た最近の中台関係は、進展と同時に、限界も示しつつある。2008年以降これまでの5年間に、ECFAを含め18の取り決めが結ばれた。中国からの観光客、中国人の研究者・学生・ジャーナリストたちへの障壁を取り払ったために、中台間の社会的、文化的、経済的分野での統合が明らかに進んだ。
昨年2012年だけで200万人の観光客、1万8千人の中国人学生が台湾に来た。128億ドルの台湾からの対中投資があり、台湾の輸出の約40%は中国、香港向けである。ただし、経済的利益は一般台湾人には行き渡っていない。中国経済の減速は台湾の経済にも影響しつつある。
台湾の人たちの間では、このような状況下で、二つの相反する傾向が見られるようになっている。「自分たちは台湾人であり、中国人ではない」と考える台湾人はアンケートでは着実に増えている。そして、大多数(61%)は「現状維持」に賛成し、「独立」賛成が15%、「統一」賛成が10%である。