2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2013年7月17日

 地方も法人税を取っているが、企業の利益は日本全体、または世界全体での活動の結果である。それを一部の地方が得るのは不公平である。地方法人税は、地域間の税収格差を拡大するもっとも大きな要因であって、地方法人税は企業活動の活発化に伴って増大する自治体の仕事量とまったく比例していない。11.93%の地方法人税は廃止すべきである。企業の活動が盛んになれば地方自治体の仕事も増えるが、雇用が増え、所得が増え、消費が増え、地価も上がる。自治体はそこで働く人から所得税、消費税、固定資産税を取れる。法人税を取る必要はない。

こまごまとした税は国を亡ぼす

 政府は法人税減税よりも投資減税が効果的だと考えているようだが、個別的な投資優遇策は望ましくない。どのような投資が必要かは企業だけが知っていることで、政府には分からない。かつ、特定の税優遇策や補助金は、一時的なものになりやすく、投資の無用な変動を引き起こしかねないからだ(近刊WEDGE2013年8月号「民間設備投資の回復には規制緩和しかない」参照)。

 役人は複雑な制度を作ってこまごまとした税を取ることが好きなものである。それが自分たちの権限の拡大につながると思っているからだろう。しかし、武田信玄を中心に戦国武将の事跡を述べながら武士の心得を描いた『甲陽軍鑑』には、「昼は萱を刈り、夜は縄をなえと農民に申し付けたり、町人や僧にも障子を張れ、竹釘を削って差し出せなどと命じたり、樹木や竹の税あるいは塩や木綿の税を村々に課すことなど」は邪欲が深く、「領国を失い家中を亡ぼす利口すぎる武将」のすることだとある(高坂昌信著、佐藤正英校訂・訳『甲陽軍鑑』ちくま学芸文庫、2006年、原著16世紀末、品第十二)。こまごまと税を課すことが領民に疎まれ、恨まれ、さらには他国の武将の侵略を招きかねないからだ。

 現在では経済政策に失敗しても侵略を招く可能性は少ないだろうが(北朝鮮は経済政策の失敗を重ねているが、侵略は招いていない)、企業に逃げられる可能性は高い。


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