経済の常識 VS 政策の非常識

2013年7月17日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 法人税は引き下げるべきである。日本の法人税率(国地方合計)35.64%に対して、アメリカ(カリフォルニア州)40.75%、フランス33.33%、ドイツ29.55%、イギリス24.00%(2015年4月に20.00%に引き下げることが確定)、韓国24.20%、シンガポール17.00%で、日本の法人税はアメリカを除けば主要国の中でもっとも高い(財務省ホームページ「法人所得課税の実効税率の国際比較」2013年1月現在)。

赤字企業が7割だから減税すべき

 法人税は利益に課税されるものだから企業の行動に影響を与えないという議論がある。これによれば、企業はいずれにしろ利益を求めるものだから、利益を得た結果に課税しても、税率が100%未満であれば企業の行動に影響を与えない。だから、法人税はいくら高くても良いということになる。

 しかし、企業は利益を減らすこともできる。どうせ税金で取られるなら取引先を接待し、仲間内で飲み食いしてしまえということになる。法人税の低いところにある子会社に本社から製品を安く売って利益を子会社に溜め込むこともできる。合法及び非合法すれすれの様々な利益圧縮手段が実行されている。赤字企業が7割だから法人税減税は意味がないと言われるが、高い法人税を嫌って利益圧縮した結果が7割の赤字企業である。赤字企業が7割だからこそ法人税減税が必要なのである。

 さらに重要なことは、法人税の高いところに投資をしなくなるということである。安倍政権の成長戦略には「民間投資を盛んにする」という修飾語がついている。だったら法人税は下げるべきである。

 そもそも法人税は誰に対する課税なのかが分からない。企業が法人税を価格に転嫁できるのなら企業ではなく消費者が税を負担していることになる。企業の利益が減るのなら株主が負担していることになるが、株主は株式ではなくて別の投資の仕方を考えるだろう。企業が株主に嫌われれば集まる資金が減って投資も減る。法人税の安い国で投資をしようとするなら日本国内での投資が減る。いずれにしろ望ましくないことだ。

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