TCOG崩壊の最大の原因は、北の核問題解決を目指して03年から始まった6カ国協議を通じて、韓国が北朝鮮への柔軟な姿勢に傾斜し、日米と足並みが乱れてしまったことだった。それだけに、対北融和政策をとってきた文在寅政権に代わって尹錫悦政権が登場、そのもとで徴用工問題をめぐる日韓関係の軋轢が終息したことは、TCOG再活性化の環境整備をもたらした。
日韓でミサイル探知、迎撃の情報交換を
新TCOGが動き出せば、政策協調のほか、最近の北朝鮮のミサイル技術高度化に対抗するため、軍事面での連携、とくに日韓のそれが重要さを増す。両国が行うべきはまず情報の共有だ。
北朝鮮は変則軌道、移動式発射台、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの技術を駆使、その結果、事前の兆候察知、迎撃は難しくなっている。日韓がミサイル発射の探知、迎撃で大きな威力を発揮するイージス艦の情報、データの即時共有に加え、破壊にむけた共同運用を行うことができれば、対応能力が大幅に向上する。
4月14日、ワシントンで開かれた日米韓3カ国の防衛実務者協議(局長級)で北朝鮮のミサイル発射情報の共有に向けた作業の継続が確認された。この場で、ミサイル防衛や対潜水艦作戦の共同演習を定期的に行い、訓練を拡充していくことも検討されたと伝えられる。
4月17日には早速日米韓3国のイージス艦が参加して日本海で共同訓練が行われ、同日、ソウルでは日韓の外務、防衛当局者による安保対話が5年ぶりに開かれた。今後、連携が一層進むと期待されている。
米国がウクライナ問題で忙殺され、日韓関係がしっくりいっていない状況の中で北朝鮮は、躊躇せずに国連決議違反のミサイル発射を強行することができた。日米韓の強固な連携が復活するとなれば、大きな掣肘(せいちゅう)となり、日米韓からみれば大きな抑止となる。
こうした日韓のパワーの〝ショーケース〟が整うことで初めて、「北京の大使館ルート」が、本来の効果を発揮する。今回のような共同訓練、実務者協議が行われていることを考えれば、それを常設化、TCOG再生につなげることは困難ではない。
日本核武装論という〝劇薬〟
もうひとつの手段は、〝劇薬〟ともいうべき日本の核武装をめぐる議論だ。
米外交界の長老で、ニクソン政権の大統領補佐官や国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏が17年に米紙へ寄稿、朝鮮半島での現在の危機が続けば、いずれ日本は核武装するだろうと予測した。