―― 職場うつが日本では増えていますが、アメリカでもうつで悩む働く人たちは少なくないと思います。その対応の違いについて教えてください。
市川:職場うつといえる状況は、十数年前の日本ではほとんど見かけなかったと思います。軽度のうつ症状の状態で出社できなくなり、やがて休職し重症化してしまう人が日本で増えているということでしょう。もちろん多様な状況があるとは思います。ただ、アメリカでは精神科や内科に通い、抗うつ剤を処方してもらいながら必死に会社に行く人が多く、休職する人は少ない。
それは雇用制度の違いがあるからでしょう。待遇のいい会社でも休職できる期間は3カ月程度まで、ほとんどの会社で休職は失職につながってしまいます。日本ではカウンセリングを受ける人は少ないのですがアメリカは多い。
日本の職場うつの要因には、雇用などへの不安があると指摘されますが、確かにそうだと思います。ただ、アメリカをみると働く人は、常に解雇される不安を抱いていると言ってもいい状況です。それでもケアできる仕組みが充実していることが、日米の差です。何でもアメリカと同じ状況を作ることがベストだとは思いません。ただ、日本は社会全体でうつを減らして行こうという取り組みが弱いのは確かです。
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