2024年12月14日(土)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年5月8日

 社会的、精神的ストレスの増大が、心を落ち着かせる副交感神経を抑え、交感神経を優位にさせてしまう。これが不眠を引き起こし、気力、集中力の低下を招くことは、すでに解明されている。自律神経をバランスさせるには、自然に触れる森林セラピーや適度な運動、呼吸法など多様な方法があると言われる。その中で気軽に副交感神経を刺激できるのが音楽療法。免疫学の専門家で音楽が脳や健康にもたらす効果を研究している埼玉医科大学の和合治久教授に、うつが蔓延する社会状況と音楽療法のエビデンスなどを聞いた。


和合 治久(わごう・はるひさ)
東京農工大学大学院修士課程修了、京都大学にて理学博士取得。埼玉医科大学短期大学教授・学科長・学長補佐を経て、2006年より埼玉医科大学保健医療学部教授・学科長。首都大学東京、尚美学園大学非常勤講師、中国・東北師範大学、長春中医薬大学客員教授を兼務。専門は比較免疫生物学、免疫音楽医療学。著書に『21世紀の音楽療法を考える』(くおん出版)など多数。

交感神経優位の現代社会に問題あり

―― うつ症状で悩むサラリーマンが増えています。その一人一人の環境や要因が異なるので、すべての人に対応する改善法、治療法はないのでしょう。しかし、うつが増える社会的な要因はあるはず。どのように見ていられますか。

和合:抑うつ状態に陥る人が増えている大きな要因は社会構造だと思います。現代は「不安」「悲しみ」「恐れ」という人間の3大感情がものすごく溢れています。身近な例でいえば、会社に行けば人間関係がうまくいかない。コミュニケーションの場で生じるぶつかり合いや悩みがあり、仕事が続けられるのか不安が押し寄せてくる。会社の要求は、生産性と効率性の追求ですが、人は増やさないので過重労働になり、さらにリストラの不安がつきまとう。悩まされる状況が常態化し、かつてないほどの不安を増大させています。

 精神的ストレスが溜まってくると眠れない、体がだるいなどの症状が出て、肉体的ストレスが蓄積されていきます。その結果、自律神経という人間の意志とは関係なく動く神経系のうち、交感神経が優位の状態になってくるのです。ここに、うつ症状が出てくる大きな要因がある。

 自律神経はストレスフリーの状態であっても35歳ぐらいを過ぎると交感神経が優位に働いてきます。そこに心身両面でのストレスが拍車をかけていくのですから、常時アドレナリンが分泌されてします。これが一定の血中濃度を超えてくると不都合なことが起こってきます。


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