日本は多様な場面で、うつ病への取り組みはこれからという状況です。私どもがサービス提供するEAP(従業員支援プログラム)にしても、米国では企業が取り入れるのは当たり前ですが、日本ではまだ浸透していません。うつ病に関する一般的な認知度でみれば日米の差は大きく開いています。
常にうつ病リスクを探る米国の医師
―― うつ病に対する日米の認知度の差を、もう少し具体的に教えてください。
市川:アメリカでは精神科医以外の医師や医師以外の看護師・臨床心理士などは、患者さんがうつ病で薬物治療が必要な状態か、そうではないかトリアージ(鑑別診断)できる知識をもっています。緊急外来に心臓発作で運ばれてきた患者さんがいれば、その時点では心臓病ですが、さらにうつ病のリスクも持ち合わせているかもしれないという判断もします。あらゆる疾病で通院する段階で医師はうつ病のリスクを探りますので、アメリカでは精神科医にかかる人が多くなります。
日本では、病気で医者に行っても精神科を勧められるケースは少ないと思います。最近は少しずつ増えてきているという話は聞きますが、アメリカに比べるとまだまだです。医療体制そのものが違いますね。
私どものEAPサービスでは、カウンセリングと同時にトリアージをするよう訓練をしています。治療が必要だと判断したら精神科医を紹介し、できるだけ早く重症化しない前に治療を受けられるようにすることが大事です。
少し余談になりますが、メンタル問題から身体的な疾患が発症する身体表現性障害(心身症)が、日本では多くみかけられます。皮膚科や内科で診ても良くならず、心療内科から精神科へきて、ようやく原因が突き止められるケースです。これもアメリカ並みにトリアージすれば、早く気が付き患者さんの負担も軽減できるのではないかと思います。