2024年4月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年5月15日

 4月23日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、「歓迎できるイエレンの中国への申し入れ:北京は米財務長官からのオリーブの枝に反応すべきである」との社説を掲載している。

(scyther5/sakepaint/gettyimages)

 米中間の対話は途絶えているが、イエレン米財務長官は行き詰まりからの出口を提供した。先週、イエレンは、国家安全保障が常に経済を凌駕するというバイデン政権の立場を繰り返したが、彼女の講演内容は米国の最近のレトリックからの離別を示した。

 財務長官は、米国は中国の競争力を掘り崩そうとか、その発展を抑制しようとしていないと強調した。彼女は「経済はゼロサムゲームではない」と言った。彼女は訪中を希望しているが、北京はこれを「オリーブの枝(編集部注:キリスト教圏などで平和や和解を象徴する)」と受けとめるべきである。習近平はイエレンの申し出を、そう取り扱うことが賢明であろう。

 台湾海峡での緊張の高まりと米国の南シナ海での「航行の自由」パトロールの強化を考えれば、米中間の接触の欠如は危険である。通常のやり取りは米国が中国のスパイ気球を2月に撃ち落とした後、ほぼ完全に止まった。

 イエレンは米中双方の経済にとり災難である中国とのデカップリング(分断)を望んでいないとした。対話の回復が彼女の目標であった。彼女の講演は欧州の戦略的分析をなぞり、欧米の協力をより容易にするように見えた。これは米中対立の拡大を避ける機会であり、中国は肯定的に反応すべきである。

 バイデン政権内でハト派とされているイエレンの訪中は氷を割り、中国と米国の軍が情報交換を再開する道を容易にし、スパイ気球で取りやめになったブリンケン国務長官の訪中をも容易にするだろう。それはインドネシア・バリ島での昨年11月の20カ国・地域(G20)会議における、短いバイデン・習首脳会談に続く機会を用意することにもなる。

 対話の再開の努力はどこかで始められなければならない。米国はその立場をはっきりさせる必要があるが、今は中国が応えるべきである。

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 この社説は時宜を得たいい社説であると思われる。

 米中間で首脳レベルでも国防相レベルでも対話が行われていない状況は、双方に疑心暗鬼を起こさせる危険がある。意見が違ったとしても、意思は疎通しておくのが米中のような大国の責任ある姿勢であると言える。中国はイエレン講演を踏まえ、姿勢を転換すべきであろう。少なくともイエレン訪中は受け入れるべきであろう。


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