5月3日、イランのライシ大統領は、イランの大統領として13年ぶりにシリアを訪問した。英フィナンシャル・タイムズ紙の5月3日付の解説記事‘Iran’s president visits Syria as he seeks to bolster Tehran’s sway over ally’は、イランの戦略的意図と経済的期待について分析している。要旨は次の通り。
5月3日、ライシ・イラン大統領が、シリアの復興に対してイランの影響力を及ぼすために、2011年にシリア内戦が始まって以来イラン大統領として初めてシリアを訪問した。同様に、シリアとの関係を絶って反政府勢力を支援してきた一部のアラブ諸国もアサド政権との関係を暫定的に回復している。
イランのアサド政権に対する軍事的、財政的支援は、同政権にとって反政府勢力との戦闘に必要不可欠であり、シリアとイランの絆をさらに強めたが、ロシアとイランの支援のお陰でアサド政権は、国内の大部分の支配を回復し、反政府勢力の残党はシリアの北西部に押し込められている。
イランの国営通信社によれば、ライシ大統領はアサド大統領に対して、イランは、シリアの復興を支援する用意があると伝えた由である。
内戦中、イランの大統領はシリアを訪問していないが、アサド大統領は、イランを2回訪問して、最高指導者のハメネイ師に会っている。ハメネイ師は、シリアとレバノンのヒズボラに対する断固とした支持を示したが、これはイランの主な敵であるイスラエルをイランから離れた場所で封じ込める同師の戦略の一環である。
専門家によれば、イランとシリアの二国間貿易の総額は、イラン側の計算では年間2億5千万ドルであり、シリアの高い関税が低減されるなどすれば10億ドルまで増えるだろう。しかし、海路、陸路で運ばれるイランからの貨物がイスラエルに攻撃されるリスクが、貿易を妨げる可能性がある。
イラン指導部は、域内貿易の振興によりイランの西側からの(経済的)自立を加速させることを期待している。トランプ前米大統領が2018年にイラン核合意から一方的に脱退して以来、同合意は瀕死の状態となり、イランに対して数々の経済制裁が科せられている。
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上記の記事の内容から、これから復興フェーズに入るだろうシリアの復興需要の特需が米国の経済制裁で困難なイラン経済の救いの神になることをイラン側が期待していることがうかがわれる。