英フィナンシャル・タイムズ紙は、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国で構成する「OPECプラス」の、サウジアラビア主導による突然の減産についての解説記事を4月3日付で掲載している。要旨は次の通り。
4月2日、突然、サウジ他のOPECプラス加盟国が日量100万バレル以上の生産削減を発表すると原油価格は急騰し、3日にはアジア市場で8%上昇したが、この事は、サウジが米国との衝突を選んだことを意味する。
サウジは、OPEC加盟国と非加盟国の減産と協調して日量50万バレル(自国の生産量の5%以下)の自発的な減産を行うと発表したが、原油需要の低下の恐れがある中で原油価格の引き上げを狙っている。
このサウジが主導する値上げはOPECプラスの公式会合の外で公表された点で例外的であり、この生産削減に参加した諸国の焦りを示唆している。今回の生産削減は、3月、米国のシリコンバレー銀行の破綻とスイスのクレディ・スイス銀行のUBS銀行との強制合併により世界的な金融危機に陥り、原油需要が大幅に減るのではないかと懸念された後に決定された。
昨年10月、ロシアがウクライナを全面的に侵攻し、ロシアの欧州向けの天然ガスの供給をカットしてエネルギー危機を起こそうとしているにも関わらず、OPECプラスが公式に日量200万バレルの生産削減を公表すると、米国政府はサウジがロシアに味方していると非難した。
バイデン政権は昨年、インフレと戦うために放出した原油の戦略備蓄の再備蓄を、原油価格が安くなるまで行わないと発表した。サウジはこれに怒っていると見られる。
サウジは、バイデン政権下で米国との関係が悪化した後、米国から自立した経済戦略の道を探っているが、要するに「サウジアラビア第一主義」である。最近の中国が仲介してサウジとイランが関係回復したことが示す通り、サウジは、中国などの新しい友人を作っており、米国に対して「世界は米国一極の時代ではない」というメッセージを送っている。
サウジのムハンマド皇太子の異母兄弟でサウジのエネルギー相であるアブドルアジズ王子は、原油供給に対して世界的に投資が足りていないと主張しているが、ムハンマド皇太子の野心的な経済改革プログラムの予算は、原油収入に依存している。
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今回のOPECプラスの一部のメンバーによる日量116万バレルの減産決定は、寝耳に水であり、油価は一時的に8%上昇した。なお、OPECプラスは、昨年10月にも日量200万バレルの減産を決定しており、OPECプラスの減産プラスは、日量300万バレル強となる。
減産の事前通報に対して米側は同意しなかった由だが、米国では依然として6%の高いインフレが続いており、特にガソリン価格の上昇は米国民の生活を直撃する。バイデン政権が、今回の値上げを主導したサウジに対して怒ったであろうことは想像に難くない。