2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月13日

Oleg Elkov/Gettyimages

 2022年12月7日付の英Economist誌は、米国は中東から撤退しようとし、GCC(湾岸協力理事会)諸国は中国との関係を強化しているが、中国が中東で完全に米国の代わりを務めることはできないと分析している。

 サウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸のアラブ産油国6カ国からなるGCC諸国は神経質になっている。突然の油価の低下は、これらの国に不況をもたらし、サウジは敵対国イランを抑止するために弾道ミサイルを手に入れようとした。サウジのムハンマド皇太子は、米国に断られると中国に頼み、中国は、サウジ側が要求する武器を供与する秘密協定を結んだ。

 12月7日、習近平はサウジを訪問した。中国は GCCにとり石油や液化天然ガス(LNG)の重要な輸出先であると同時にGCC に巨額の投資をしている。2022年11月、SINOPEC(中国石油化工公司)は、カタールからLNGを購入する27年間の長期契約を結び、2022年の半年間で中国はサウジと55億ドルの一帯一路プロジェクトを契約した。

 電気通信や防衛という戦略的な分野でもGCCは、中国と関係を強化している。例えば、GCCは、米国が規制している華為技術(ファーウェイ)やAIの商湯科技(センスタイム)の重要な顧客である。また、中国は アラブ首長国連邦(UAE)に武装ドローンを売却しており、2022年の3月にはサウジは中国の巨大防衛企業とドローン製造工場を建設する契約を交わした。米国の情報機関は、中国はサウジの弾道ミサイル製造も支援していると報告している。

 一方、2021年、中国はイランと25年間の戦略的パートナーシップ協定に署名した。中国はイラン産原油の大部分を輸入し、西側がイランに制裁圧力を加えることを妨害している。

 バイデン大統領は、中国が中東でより大きな役割を果たす事を容認しなければならないであろう。しかし、米国も中国も、中国がペルシャ湾岸で完全に米国の代わりとはなり得ないことは認識すべきである。

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 2022年12月、習近平がサウジを訪問して大歓迎を受けた事は中国が中東地域で影響力を高めていることを象徴した。それは単に中国がGCCの化石燃料の大口購入者かつGCCへの大口投資家であるだけでなく、米国が中東から撤退しようとしている事にこれまで米国に安全保障を依存していた GCC諸国は困惑しており、GCC側が中国に米国の代わりを期待しているからである。だが、中国が米国の完全な代替は出来ないとしているエコノミスト誌の指摘は、その通りであろう。

 まず、中国の視点に立てば、GCCは主な石油・ガスの供給源、中国製品の輸出市場、そして、投資先である。中国のGCCに対する関心は、現時点では経済的権益に限られ、ドローン工場をサウジやUAEに建設することはできるが、米国のように現地に軍事力を展開して、GCCの安全保障にコミットすることはおそらく難しいだろう。


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