中国の習近平中国国家主席の12月7日から3日間にわたったサウジアラビア訪問は、中東における中国の存在感と影響力をまざまざと見せつける形になった。両国は訪問を「新時代の歴史的イベント」と位置付け、戦略的パートナーシップ合意などの成果を誇示した。しかし政治的には、反人権の〝独裁同盟〟の結成という色彩が濃厚だ。
まるで「盟主」のような振る舞い
サウジは同国を牛耳るムハンマド皇太子が中心となって習主席の訪問の準備を進めてきた。皇太子は2018年、サウジの反体制ジャーナリスト、カショギ氏の殺害を命令したとして、米国や欧州連合(EU)などから強く批判され、国際的な孤立を深めていた。しかし、習主席は翌年訪中した皇太子を暖かく歓迎、2人の関係が深まった。
習主席はリヤドの歓迎式典で皇太子と握手を交わし、21発の礼砲がとどろいた。上空ではサウジ空軍機が中国国旗の赤と黄色のスモークを噴射してみせるなど壮大なショーとなった。7月にバイデン米大統領が訪問した際には、皇太子はコロナ禍とあってグータッチで応えたが、今回ははるかに盛大な歓待ぶりで、米国と中国に対するサウジの現在の位置取りを象徴するものになった。
習主席は滞在中、3つの行事をこなした。1つ目はサウジ首脳との会談、2つ目、3つ目はそれぞれ湾岸協力会議(GCC)首脳会議、アラブ指導者らとの首脳会議への出席だった。習主席は一連のイベントで主役となり、またエジプトのシシ大統領らアラブ首脳が順番に〝習詣で〟する様子は主席が中東の「盟主」であるかのような印象すら与えた。
最大の焦点は石油大国サウジアラビアのサルマン国王、ムハンマド皇太子との首脳会談だった。主席の狙いは第1に石油の安定確保、第2に巨大経済圏構想「一帯一路」への取り込み、第3に中東での影響力拡大、第4に米サウジ関係に楔を打ち込みたい――ということだったろう。
一方のサウジにとって中国は最大の石油購入国。輸出石油の25%が中国向けだ。脱石油依存を目指して国家改造計画「ビジョン2030」を進めるサウジは石油供給の見返りとして、投資の拡大、港湾などのインフラ整備、ハイテク技術の移転、電気自動車工場の新設、都市建設支援などを求めた。米紙などによると、両国の企業は34分野にわたって合意、4兆円を超える取り決めが結ばれたもよう。