米国はどう対応
バイデン政権は同盟国のサウジと競争国である中国の接近に表面上平静を装っている。カービー米国家安全保障会議(NSC)戦略広報調整官は「習近平の中東訪問は別に驚くものではない」と素っ気ない。しかし米国は内心、穏やかではないはずだ。
NSCのマクガーク中東政策調整官は先月、習主席の訪問に先立ち、中国とのパートナーシップ次第では、サウジに提供するものに「制限が必要になる」と指摘。米国とサウジの同盟関係に支障が出かねないと警告し、バイデン政権が何らかの対応策を検討していることを示唆している。
サウジやGCCに〝米国離れ〟が起きた原因は元々、米国自身にある。オバマ政権時代から中国に対抗するためアジア重視として、中東の軍事プレゼンスをアジアに転換し始め、アフガニスタンからの米軍の完全撤退、イラクやシリアの駐留軍も縮小を進めた。こうした動きにサウジなど湾岸諸国が不信感を深め、他のパートナー探しに走ったのは当然の成り行きだった。
しかしサウジが今回、「あらゆる国との友好関係」と「全方位外交」を強調して、これまでの米国との伝統的な同盟関係から明確に脱却する姿勢を示したことにバイデン政権は衝撃を受けたのではないか。大統領がことある毎に中国の脅威をサウジに呼び掛けてきたが、サウジ側は聞く耳を持たなかった。米国の思惑や想定を超えて世界が動き出していることがあらためて浮き彫りになった。