次に、中国は、人民元の国際化の見地からも、石油・ガスの安定購入の見地からも、石油・ガス代金をドル建てから人民元建てにしたい。この事は、習近平のサウジ訪問に際しての声明にも盛り込まれた。しかし、巨額の米財務証券を保有し、多額の対米投資を行っているGCC側にとり、米ドル離れは報復として米国に資産を凍結されるリスクがあり、常識的には困難であろう。
中東の「火薬庫」はどうなるか?
GCC諸国が直面している安全保障上の脅威は、イランとイスラム過激テロだが、中国がイランと良い関係にあることは、GCC とイランとの摩擦に際して中国に口利きを期待出来るかも知れない。イランとしても制裁下で原油を買ってくれる中国を無碍には出来ないが、根本的にイランはGCCを下に見ているので限界があろう。
習近平のサウジ訪問直後、サウジの外相が、イランが核武装するならば、「あらゆる事態を視野に」と発言し、核武装の可能性も排除しなかった。中国もサウジに核兵器を売りはしないであろうが、米国ならばGCCへの最新鋭兵器の供与に慎重になるだろうが、中国はそういう配慮はしないであろうから、ペルシャ湾情勢の不安定化を加速する恐れが高い。
こう考えると、GCC・中国関係は、引き続き強化されるが、安全保障面では限界があるように思われる。ただし、予測不可能性が高いサウジ皇太子と野心家のUAE大統領が、石油代金の人民元建ての様な想定外の決定をする可能性は排除されない。
日本は、長年、独自の中東外交を行っているが、サウジやGCC諸国は、日本にとっても石油など資源の供給元であり、非常に重要な国々である。2022年のサウジ皇太子の日本訪問とその際に開催される予定であった東京での日本・サウジ・ビジネスフォーラムが中止になったことは残念だったが、2022年12月25日~26日にかけ、西村経済産業大臣がサウジを訪問し、リヤドで日本・サウジ・ビジネスフォーラムが開催され、約300人が参加し、覚書(MOU)の締結も行われたことは、両国関係の発展にとって評価されよう。