2023年の中東情勢は波乱含みの展開になるだろう。その中心は反ヒジャブ(スカーフ)・デモに揺れるイラン、極右政権が始動したイスラエル、そして膨大な石油資源を武器に独立独歩の歩みを始めたサウジアラビアの3カ国だ。ウクライナ戦争の動向とも絡み、この三つ巴の動きに世界も揺さぶられることになりそうだ。
反政府デモ封じ込めに自信
最高指導者ハメネイ師やライシ大統領らイラン指導部は反ヒジャブ・デモの封じ込めに自信を深める一方、デモの主催者らは運動が思うように広がらず、限界に直面していることが次第に明らかになりつつある。当局はヒジャブなど女性の服装を取り締まる風紀警察を廃止すると譲歩の姿勢を示したものの、デモに対する徹底的な弾圧を続行、この強硬策が功を奏している。
人権活動家らによると、これまでに治安部隊の銃撃などによってデモに参加した500人以上が死亡、約1800人が逮捕された。逮捕者のうち十数人に死刑判決が下され、すでに12月に2人が処刑された。逮捕された中には、米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した著名な女優タラネ・アリドゥスティさんらが含まれている。
最近ではサッカー元イラン代表で国民的英雄のアリ・ダエイ氏の妻と娘が航空機でテヘランからアラブ首長国連邦(UAE)に向かっていたところ、強制着陸させられて渡航禁止になった。妻はデモに連帯を示す目的でゼネストに参加し、店を開けなかったことがあったという。当局の締め付けの一環と見られ、政府に批判的な国民を監視していることの表われだ。
デモの参加者に動揺が走っているのは死刑判決を受けた2人が処刑されたからだ。北東部マシャドで公開処刑された23歳の男はクレーン車で吊るされ、その動画が広く出回った。当局の見せしめに他ならないが、このところ参加者の家族らがデモに加わらないよう説得するケースが目立っているという。