サウジ、イランとの修復を本格化?
サウジを牛耳るムハンマド皇太子は大国の間を巧みに泳ぎ、ウクライナ戦争で生じたエネルギー不足を好機ととらえて独立独歩の道に踏み出した。皇太子は22年、バイデン政権の要請を2度にわたって拒絶し、これまでの米国寄りの政策から方向転換を図った。
いずれもウクライナ戦争絡みで、最初はロシア批判に加担するよう求めた要請に応ぜず、さらにはバイデン氏の石油増産要求にも、ロシアとの協調減産の道を選択し、拒否した。バイデン氏は面目をつぶされた格好になったが、皇太子の米国離れはこれで済まなかった。バイデン氏が敵視する中国と急接近し、習近平国家主席をリヤドに迎え、強固な関係を誇示して見せたからだ。
中東専門家によると、全方位外交を掲げる皇太子が次に狙っているのが断交中のイランとの関係修復だ。皇太子は当初、米国の求めに応じてイラン包囲網の一翼を占めたが、その後対決路線がかえってリスクを招くとして融和路線に軌道修正。イラクのバグダッドで21年、実務当局者による接触に踏み切った。
こうした協議が実り、イランのアブドラヒアン、サウジのファイサル両外相が22年12月21日、ヨルダンのアンマンで断交以来初めて会談した。イラン側の発表によると、ファイサル外相は国交回復の用意があると述べたと言われ、関係修復に向けて対話が続いていることが浮き彫りになった。
だが、イラン革命防衛隊のサラミ司令官が10月、サウジがイランの反ヒジャブ・デモに介入しているとして強く警告したように、関係修復に警戒する勢力もある。イスラエルもサウジがイランと修復することには反対で、この問題をめぐって水面下での駆け引きに拍車がかかるだろう。