2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月5日

CIL868/Gettyimages

 12月10日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)に、Samer Al-Atrush同紙サウジアラビア特派員が、「習がリヤドを訪問し、湾岸アラブ諸国は中国に接近している。サウジは、北京とワシントンとの紐帯を維持することはゼロサムゲームではないと言う」との記事を書き、習近平のサウジ訪問を論じている。

 12月9日、アラブ諸国と中国は、サウジが中国と米国との関係をバランスさせる中、習近平との首脳会談でより深い関係を誓約した。中国は地域とより緊密に働き、石油、ガス貿易を増加させると述べた。

 米国は今年初めに石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくるサウジ主導の「OPECプラス」が原油減産を決めた後、サウジとは緊張した関係になっていた。バイデン大統領がサウジを訪問した数カ月後、サウジは今回の中国との首脳会談を設定した。サウジの首脳と会った習は、湾岸諸国協力機構(GCC)首脳会議とアラブ首脳会議にも参加した。

 中国とサウジ両国は、包括的戦略合意と、建設や中国の華為技術(ファーウェイ)のブロードバンドを含む契約を含む24以上の取引に署名した。習は石油とガスの貿易を中国通貨で行うことを北京は勧めると付け加えた。サウジ高官は人民元での貿易に問題はないが、それは石油販売には拡大しないと述べた。中国外務省は12月9日、双方が人民元での初めての取引を行ったことを確認したが、その目的は明らかになっていない。

 習は地域と5G技術について協力するとも述べた。米国は、華為技術の5Gインフラは中国政府に重要なアクセスを与えるとして反対してきた。

 サウジのファイサル外相は、米国の兵器販売と安全保障援助に大きく依存しているサウジは米中と良い関係を追求していくと述べた。「我々はそれをゼロサムゲームとは見ていない」と首脳会談後に述べた。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)中東部長アルターマンは、「中国接近についてのリヤドからの発表は〝路線の変更〟ではない。湾岸の高官は米国が中東から遠くなり、世界の他の地域に焦点を合わせていると言っている。これはトレンドの継続である。中東のエネルギー生産者はこれまでと同様に米国に頼ることはできないと感じている。彼らは中国への接近がいくつかの利益をもたらすと考えている。」と言う。

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 習近平のサウジ訪問、そこでのGCC首脳およびアラブ諸国との会議は、中国の湾岸アラブ諸国におけるプレゼンスを高めたことに疑いの余地はない。

 米国では警戒心が出ており、例えば、米ワシントン・ポスト紙に、オルセン論説員は「米国はサウジが中国の軌道に落ちることを許す余裕はない」とし、道徳的考慮よりも安全保障上の考慮を重視すべきであると論じている。これに対し、このFTの記事では、CSIS のアルターマン中東部長は「米国の中東離れの傾向の中で起こっていることで、路線の変更ではない」としている。


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