2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年3月30日

Anastasiia_Guseva/Gettyimages

 米ワシントンポスト紙ベイルート特派員のサラ・ダドウチらが3月10日付の同紙「イランとサウジアラビアは中国の仲介で、関係を復活させる」との解説記事を書いている。要旨は次の通り。

 3月11日、サウジとイランは両国関係を復活させるとの合意を中国で発表した。3カ国の共同声明では、この合意は、習近平の発議で3月6日に始まった話し合いの結果であるとされている。

 サウジは2016年、サウジの著名なシーア派聖職者ニムールの処刑に怒ったイランの抗議者により在イランのサウジ大使館が攻撃・放火された後、イランとの外交関係を断絶した。

 サウジはイランがシーア派地域で闘争の種をまいているとイランを非難してきた。サウジはまた、イランがサウジ主導連合と厳しい戦争をしているイエメンのシーア派武装勢力フーシに武器を供与していると非難してきた。

 2019年、フーシが無人機でサウジの石油施設を攻撃、サウジの石油生産の半分をダメにした後、緊張は新しいレベルに達した。オバマ米政権はイランとサウジの対立が地域での宗派対立の原因になるとして、イラン・サウジ関係の修復を目指したが、ほとんど成果はなかった。

 イランにとっては、国際的孤立が深まり国内では反政府抗議が何か月も続く不安の時に、今回の合意が成った。専門家は、「米国との核交渉が行き詰まり、対露武器輸出で欧州連合(EU)から忌避されているイランは、外交上の勝利を獲得した」と言う。

 サウジはイランの核の野望に警戒心を示し、長期的敵であるイスラエルとの外交正常化を探っている。トランプ時代にイスラエルはアブラハム合意でアラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンを含む湾岸諸国との関係正常化を始めた。イスラエルのネタニヤフ首相にとり、サウジとの関係改善はイランに対抗するために重要な優先事項であった。

 今回の合意での中国の役割は広く喧伝されている。これは米国を含む大国に「中東の中心が動いている」とのメッセージを送るためだろうと言う人もいる。中国は中東からの最大のエネルギー輸入国であり、サウジもイランも中国市場に長期的アクセスを得ることに大きな関心がある合意の署名が米のイラク侵攻の20周年の直前に行われたことは大きな象徴的意味をもつ。中国がペルシャ湾岸での真の戦略的アクターとして台頭した、との見方もある。

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 サウジとイランが外交関係を復活させるという今回の合意は、中東の地政学的状況に大きなショックを与える可能性のある合意であると評価される。


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