2024年6月15日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年3月30日

 まず第1に、最悪の人道的危機の原因とされてきたイエメン内戦(サウジ政府の支援を受けるイエメン政府とイランの支援を受けるフーシの戦い)は終了に向かう可能性が高くなるだろう。これは良いことである。

 第2に、イランを孤立させる政策は破綻しかねない。イスラエルはイランを国際的に孤立させることを念頭に、2020年のアブラハム合意でUAE、バーレーンなどのアラブ諸国との関係改善を進めてきた。その延長でサウジとの関係正常化をも考慮してきたが、今回、サウジとイランが接近し、多くのアラブ諸国がそれを歓迎したことは、イスラエルのイラン孤立政策が成り立ちがたいことを示した。イスラエル外交が方向性を変えかねない。イスラエル国内では既に前首相のラピッドがネタニヤフ政権の外交を批判している。

中国の影響力拡大は必至

 第3に、今回の合意が中国の仲介で出来たことに関連するが、中東での戦略的アクターとして中国が出てきたことの含意をどう考えるかである。端的に言うと中国が米国にとって代わり、湾岸地域で最大の影響力を持つに至るのかという点であるが、まだそうはならないと見られる。中東地域で米国が持つ軍事力は依然として圧倒的であって、安全保障供与者としての米国を中国は代替できないだろう。

 しかし、中国の湾岸地域での影響力が大きくなることは確実である。日本の中東地域への石油の依存度が95%にもなる現状を変えていかないと、中国に日本への圧力行使の手段としてこの影響力を利用されかねない。台湾有事の際も、経済制裁のやりあいになれば、その可能性は高いのではないか。

 第4に、イランは核問題とウクライナ戦争でのロシアへの武器供与、国内での混乱で難しい状況にあったが、サウジとの国交回復で、外交面では大きな成果を上げたことになる。イランの核兵器開発は今後さらに進んでいくことになるのではないかと懸念される。中東での核拡散の恐れは強まっていると思われる。

   
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