2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年5月25日

 同時に、記事も指摘する通り、イランとシリアの物流はイスラエルの空爆により阻害されており、イランが復興特需にあずかるのは容易ではないことが示唆される。ちなみにロシアがアサド政権を支援したのは、地中海にある唯一のロシア海軍の拠点であるラタキア港の確保が大きいと思われる。

 2011年に始まったシリア内戦は、少数宗派であるアラウィ派のアサド政権と人口の大多数を占めるスンニ派の反政府勢力との間で激しい戦闘が続いたが、イランとロシアが支援するアサド政権の勝利が見えて来ている。内戦の勃発後、サウジアラビア他のスンニ派アラブ諸国は、スンニ派の反政府勢力を支援して来たが、5月1日にシリアとサウジの外相が会談を行うなど、サウジを筆頭にアサド政権勝利の現実を認識した動きが見られる。

 内戦中、物的、人的な支援を行ってきたイランとしては、これまでの苦労がやっと報われると思いきや、サウジなどに果実を横取りされる訳にはいかないと、ライシ大統領の訪問となったのであろう。

増加するイスラエルの介入

 イランにとってシリアは、世界で唯一イラン型イスラム革命を支持するレバノンのヒズボラへの重要な補給ルートである。そして、イランには、イスラエルの隣国シリアにイラン系民兵を展開させる事により、イスラエルを牽制するという思惑があり、シリアへの影響力維持は死活的に重要である。当然、イスラエルはこれを容認出来ず、妨害することになる。米国の経済制裁再開後、イラン側も資金不足に陥り、ヒズボラに対する財政支援も原油や油製品になったようであり、それゆえ、イスラエルによる燃料トラックやタンカーへの攻撃が増加している模様だ。

 中国の仲介によるサウジとイランの関係回復が大きく取り上げられているが、実はシリアを巡ってサウジとイランの勢力争いが起きつつある。中東は一筋縄ではいかない。

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