2024年12月22日(日)

ひととき特集

2013年8月20日

 8月下旬のおすすめはと聞くと、「秋刀魚(さんま)! 脂が、乗りすぎなぐらい乗っている時期。生だと身がダレるから、うちではごく軽く〆(しめ)て出す。ハラワタのソースで食べるフライ、肝醤油での焼き秋刀魚……」。止まらない「秋刀魚推し」である。残暑の夜、満腹を抱えて蔵のまちをそぞろ歩けば、勢田の川風が、さぞ心地良いことだろう。

●虎丸
伊勢市駅から徒歩約10分
伊勢市河崎2─13─6
☎0596(22)9298
営業時間/17時~22時30分(材料切れ次第終了、予約がおすすめ)
定休日/木曜(良い魚が入荷できなかった場合も休業)

宮町・おかげ横丁
地の肴で、地の酒を

「賑やかな伊勢のお正月のように繁盛を」と願いを込めて一月家に

 参拝後、ちょっと早めに「軽く一杯」となったら、外宮さんからほど近い宮町に向かうといい。「一月家(いちげつや)」の開店は、まだ日も高い午後2時。白い暖簾をくぐると、カウンターには早々から地元の方が数名。しかし怯(ひる)むことはない。一見の旅人も、一献傾ければその一員だ。

 壁に掛かる黒札には白文字で「たまご焼き」「ポテサラ」「湯どうふ」……「うちは凝ったものないんよ(笑)。居酒屋は定番が一番。そやな、夏なら盆汁(ぼんじる)がええんやないかなぁ」と、4代目の森田一也さん。伊勢の「な言葉」が温かい。お盆の時期に出すという夏野菜の味噌汁「盆汁」は、「酒のアテになるように具がいっぱいでな」。品書きを見て気になった「鮫(さめ)のたれ」とは鮫肉の干物。「干すと垂れ下がるから、たれ。昔はお弁当にも入っとったよ」。置いている地酒は大台町の「東獅子(あずまじし)」に久居(ひさい)の「初日(はつひ)」、「これなんか、地元の人はコップ酒でいくな」と、目の前にドンと置かれたのは多気(たき)町の「鉾杉(ほこすぎ)」だ。伊勢のどこかの家庭にあがりこんで飲んでいるようなこの感じ。すでに心は常連である。

 御歳80歳となる先代もいまなお現役。2歳下の女将と一緒に、夜10時の閉店まで毎日カウンターに立ち続ける。お勘定の時は、先代が手にするソロバンにご注目。大正13(1924)年創業の店より古い、日露戦争戦勝記念のヴィンテージだ。

右奥、伊勢牛を使った贅沢な「牛すじみそ煮」の左隣が「鮫のたれ」。その下が「盆汁」、右の「いわし酢」は甘み強めでアテにぴったり

 

●一月家
伊勢市駅から徒歩約15分、または近鉄山田線宮町駅から徒歩約5分
伊勢市曽祢2─4─4
☎0596(24)3446
営業時間/14時~22時
定休日/水曜


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