2024年12月2日(月)

ひととき特集

2013年8月20日

伊勢神宮は今年、式年遷宮のクライマックスである「遷御」を迎える。年間の参拝者も1000万人を超える勢いだ。「ひととき」9月号で伊勢神宮大特集の執筆を担当した著者が、長年にわたる伊勢神宮取材から、今回の式年遷宮の盛り上がりの背景を分析する。

 今年8月5日、夜7時。東京大手町・日経ホールに500人あまりの女性が集った。「丸の内キャリア塾スペシャルセミナー~伊勢神宮で日本を知る」。文字通り丸の内のキャリアウーマンを対象にした講演会で、受講希望者は事前申し込みの段階で1300人を超え、抽選を行っている。私が登壇して話し始めると、会場にはノートパソコンに入力したり、メモをとる人の姿が多く見られ、女性たちの伊勢神宮へのただならぬ熱意に驚いた。それは年齢層の違いこそあれ、前日に日本橋の島根県交流拠点「しまねかん」で行った「伊勢神宮と出雲大社」講座でも感じられた。

 なぜ今、これほどまでに「お伊勢参り」が注目されているのだろうか。

20年に一度の式年遷宮に合わせ、
増減する参拝者数

 伊勢神宮(三重県伊勢市)は、皇室の祖先神につながる天照大神(あまてらすおおみかみ)をまつり、神社界でも日本の総氏神として別格と尊ばれる。大きな特徴は20年に1度、神をまつる社殿を新しく造営し、御神体を遷す「式年遷宮」で、1300年続く大祭だ。

 平成24年の伊勢市観光統計の神宮参拝数の変遷(PDF/4頁目のグラフ)は、神宮司庁(じんぐうしちょう)が内宮(ないくう)と外宮(げくう)の各入口でカウントした参拝者数の推移が記されるが、第二次世界大戦前後の特別な時期を除くと、式年遷宮が近づくと増える参拝者数は、遷宮イヤーにピークを迎え、その後徐々に下降するという傾向を示す。

 参拝者数の集計を始めた明治28年からこれまでで最も多かったのは第60回式年遷宮の昭和48年で、859万人。それが今回は式年遷宮の8年前、遷宮諸祭の最初の祭事、山口祭(やまぐちさい)が始まる平成17年あたりから、参拝者数が早くも増え始め、内宮の宇治橋が架け替えられた翌年の平成22年には過去最高の882万人を記録した。

 伊勢自動車道(津~伊勢間)の無料化社会実験実施などで幅広い層が訪れたのが増加の要因とされるが、「遷宮の年以外で記録が更新されたのは異例のこと」と神宮司庁広報室はコメントしている。これまでとは違う動向は、「神社ブーム」の裏付けでもある。

 平成23年は東日本大震災の影響により788万人に減少したが、翌24年には14万5000人増の803万人に回復。遷宮の今年度は、出雲大社の60年ぶりの御遷宮とも重なり、注目はうなぎのぼりで、1月から6月までの上半期ですでに600万人を数え、年間1000万人にのぼると想定されている。

神宮、神社界、官民による取り組みと、
「常若」の聖地への希求

 今回の第62回式年遷宮への取組は、今から8年前、平成17年から始まった。伊勢神宮の広報は神宮司庁の総務部弘報課が担当していたが、長らく使用していた「弘報」をインターネット時代に即してネット検索しやすい「広報」と改め、新たに広報室を設置した。これには神宮の広報にかける並々ならぬ意欲が伺えた。


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