安保激変

2013年8月20日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

「いずも」型は統合運用の要になり得る

 「ひゅうが」型DDHは、従来のヘリ搭載護衛艦からヘリ空母への過渡期的な性格を持っている。まず、艦隊に対する指揮統制能力が強化され、艦隊司令が搭乗する旗艦としての機能を持っている。多種多様なアンテナを備え、通信能力も強化されている。また、防空ミサイルや対潜ミサイル、魚雷など、強力な戦闘能力も備えている。

 一方、自衛隊の統合運用体制への移行を反映し、「ひゅうが」型は統合任務司令部を置くための多目的コンパートメントを備えている。このコンパートメントは、人道支援・災害救援任務では軍民両用の司令部スペースともなる。

 「いずも」型は、よりヘリ空母としての性格が重視されている。最低限の自衛装備しか装備されておらず、航空機運用プラットホームとして艦隊の中核に位置づけられている。つまり、戦闘指向のプラットホームではなく、より多目的艦船としての性格が強調されているのだ。

 特に、「いずも」型は今後、自衛隊が目指す統合運用の要になり得る。そして、南西諸島を守るための海兵隊的機能を支える柱にもなれる。「いずも」型を中核とする艦隊は、対潜任務だけでなく、水陸両用任務も実施可能な「両用即応グループ」を目指すべきである。こうすれば、離島防衛だけでなく、大規模災害における救援任務でもその能力を発揮できるだろう。

 今年6月にアメリカで行われた統合訓練「ドーン・ブリッツ2013」では、米軍の輸送機オスプレイが「ひゅうが」に着艦し、翼を折りたたんだ形で格納庫に搭載された。「いずも」型にもオスプレイは搭載可能と考えられるし、実際に後部エレベーターは「デッキサイド式」と呼ばれるものになっていて、大型機も昇降可能だ。「いずも」型でオスプレイや大型ヘリを運用すれば、自衛隊の水陸両用能力は大幅に向上が期待できる。

限られた予算と資源の中で

 最後に、周辺の安全保障環境が大幅に改善しないのであれば、将来的にSTOVL戦闘機の運用も検討されることになるだろう。STOVL型のF-35Bの運用については、同機の開発が遅れているためスペックもコストも知るすべがなく、判断することはできない。だが、少なくともSTOVL導入と運用体制の検討は続けられるべきだ。

 もちろん、正面から軽空母を持つべきだという意見もあろう。しかし、限られた予算と資源の中で最適な作戦構想を立て、部隊を編成し、それを日米同盟体制の中に位置づけることが日本の安全保障戦略にとって何よりも重要である。だからこそ、「ひゅうが」型2隻と「いずも」型2隻を使いこなし、これらを中核とする運用体制を確立することがまず検討されるべきである。

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